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フランス白粉の謎 [海外の作家 エラリー・クイーン]


フランス白粉の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

フランス白粉の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: エラリー・クイーン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/09/27
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
五番街にある〈フレンチズ・デパート〉のウィンドウに展示された寝台から、女性の死体が転がり出た。被害者はデパートの取締役会長の後妻。遺体のくちびるには口紅が塗りかけで、所持していた別の口紅からは謎の白い粉が発見される……。この怪事件から唯一無二の犯人を導き出す、エラリーの名推理。巨匠クイーンの地位を不動のものとした〈国名シリーズ〉第二作。

「ローマ帽子の謎」 (創元推理文庫) に続くエラリー・クイーンの国名シリーズ新訳第2弾です。「ローマ帽子の謎」 の感想へのリンクはこちら
この作品はなんといっても最後の一行になるまで犯人の名前が明かされないという趣向が素晴らしいと、瀬戸川猛資さんが「夜明けの睡魔―海外ミステリの新しい波」 (創元ライブラリ)で激賞されていて、読み返してみたいなぁ、と思ってはいました。でも、再読ってなかなかきっかけがないと読んだことのない本もいっぱいあるのに踏み切れませんでした。幸い、この作品の新訳が出て、こうして読むことができました!
確かにとても印象に残るラストシーンで、オープニングの派手な死体発見シーンとともに覚えていましたが、それ以外のところはまったくおぼえていなかったので、とても楽しめました。
この作品には、ロジックの不備(?)が指摘されることがあります。エラリー・クイーンが犯人決定の最後のキーとして使う手掛かりが、あまりにも決定的で、それだけで犯人が特定されてしまう、というものです。
個人的にはそれとは別の不満がその手掛かりにはあります。犯人はAという行為をしようとして、その目的のためにBという行為をします。その結果手掛かりを残してしまうのですが、Aという行為をするのに、Bという行為をする必要はないと思うのです。Bという行為をしないで、Aという行為だけをすればよかったのです。
ですがそれは、最後の一行まで犯人を隠すという、素敵な素敵な趣向のためなのです。少々の無理は気にしない、気にしない。ミステリには、それくらいの茶目っ気というか、稚気があったほうが、ずっとずっと楽しめると思います。派手なトリックなどなくても、論理で読者をびっくりさせることができる。そのことを示して見せたエラリー・クイーンの魅力全開です。
この作品を読み返したおかげで、ミステリを読み始めたころの、わくわく感を、ドキドキ感を思い出しました。楽しかったですね。

ところで、日本語タイトルは白粉となっていますが、原題は POWDER で、手掛かりも白い粉であって、白粉(おしろい)ではありません。ひょっとして、「フランスおしろい」、と読むのではないでしょうか? では、なんと読むのでしょう? うーむ。余計なことですが、気になりました(笑)。

ローマ帽子の謎 [海外の作家 エラリー・クイーン]


ローマ帽子の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

ローマ帽子の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: エラリー・クイーン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/08/30
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらす じ>
新作劇〈ピストル騒動〉上演中のローマ劇場の客席で、弁護士のフィールド氏が毒殺された。現場から被害者のシルクハットが消えていたことを手がかりに、ニューヨーク市警きっての腕ききリチャード警視と、推理小説作家エラリーのクイーン父子が難事件に挑む! 巨匠クイーンのデビュー作にして、“読者への挑戦状”を掲げた〈国名シリーズ〉第一弾の傑作長編。

いわずと知れたエラリー・クイーンのデビュー作の新訳版です。創元推理文庫ではこれを皮切りに、国名シリーズが順次新訳となるようです。楽しみ。
当然ながら(?)旧訳版はシリーズ全作読んでいます。
エラリー・クイーンファンであられる有栖川有栖さんが解説を寄せられていて、それに付け加えるようなことは何もありません...この作品を未読の本格ミステリ好きの方がこの解説を読めば、絶対に読みたくなると思います。
ロジック重視の作風であるエラリー・クイーンが、読者への挑戦を掲げて読者に挑む、まさに本格ミステリの王道をいく作品です。
昔読んだときの印象がほとんどなく、国名シリーズの中では影が薄いような記憶でしたが、十分楽しめました。
書かれた時代が時代なので(原著は1929年)、古びたところがあったり、大仰な部分があったりはしますが、シルクハットが現場から消えたのはなぜか、をキーに犯人をつきとめていくところは、ロジック派の面目躍如な感じがします。これでもまだデビュー作なのでおとなし目で、犯人限定のロジックとしてはかなりシンプルな印象を受けましたが、こういうのを読むのがミステリを読む醍醐味だなぁ、なんて生意気なことを考えてしまいました。
事件は1つだけで捜査や尋問が続きますので、現代のスピードあふれる息つく暇もないようなミステリになれた人だと展開の遅さを感じてしまうかもしれませんが、ロジックで事件を究明していくさまを味わうにはじっくりいきたいところです。
解説でも触れられていますが、今となって読み返すと、この作品の序文はすごいでたらめですね(笑)。もっとも現実の事件を扱っていてもフィクション化されているという設定なので、その後のわれらが知るエラリー・クイーンと、序文でのエラリー・クイーンがまったく別物でも矛盾はない、ということなのかな?
なんにせよ、読みやすい新訳で読めて楽しかったです。今後にも期待します。


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