SSブログ

モップの精は深夜に現れる [日本の作家 近藤史恵]

モップの精は深夜に現れる
近藤史恵
文春文庫

モップの精は深夜に現れる (文春文庫)

モップの精は深夜に現れる (文春文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/05/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
大介と結婚した掃除人キリコは、短期派遣の清掃の仕事を始めた。ミニスカートにニーハイブーツの掃除のプロは、オフィスに溜まった人間関係の澱も死角も見逃さず、電器メーカーの子会社に編プロ、モデル事務所の謎を鮮やかに解き明かす。夫・大介が探偵役となる最後の謎は、キリコ自身。読後感温かなミステリ。

「天使はモップを持って」 (文春文庫)に続く、掃除人キリコのシリーズ第2作。
「掃除をしている人ってね、知らない人には見えないんだよ」「だから、この事件はわたしが見えない人が起こしたものなの」(P117)というセリフ、いいですよね。「見えない人」って、ミステリの一つのテーマではないですか。掃除人は、確かに「見えない人」の資格 (?) 十分。このあと、きっと、Aさんはこれこれというエピソードがあるからわたしに気付いている(=私が見えている)、Bさんは...という風に、犯人特定の論理に使われるんだろうなぁ、見えない人テーマを逆サイドから捉えて作品に仕立てるなんてかっこいいなぁ、と妄想全開で読んでいましたが、そういう展開には(当然)ならず。そりゃそうですよね、近藤さんって、そしてこのシリーズって、そんなギラギラした作風ではないですし。
そんな勘違い読者にも負けない(?)、「日常の謎」作品集。「日常の謎」とはいえない大きな事件もありますが、事件の解かれ方が「日常の謎」なので、全体の中で浮いていません。
各編の視点人物の目で語られていた日常を、キリコの言葉という新しい光をすっと当てることで、違った形で浮かび上がらせる。これがこのシリーズの醍醐味だと思います。肩凝りならぬ、心の凝りがほぐれていくような、視点人物の(ラストにおける)すっきり感が読みどころでしょう。
こういう文脈で捉えると、ちょっとこの動機は納得感がないなあ、と個人的にはひっかかりを覚えてしまう第3話「オーバー・ザ・レインボウ」も、テーマになじんではいます。
最終話で、大介やお祖母ちゃんと再会できたのもうれしい。いや、キリコの家出という、なにやら物騒な幕開けではありましたが。
このシリーズ、まだまだ続くようなので(単行本はあと2冊、現段階で出ています)、また読みたいと思います。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0