ルームメイト

ルームメイト (中公文庫)

• 作者: 今邑 彩
• 出版社/メーカー: 中央公論新社
• 発売日: 2006/04
• メディア: 文庫

＜裏表紙あらすじ＞
私は彼女の事を何も知らなかったのか……?　
大学へ通うために上京してきた春海は、京都からきた麗子と出逢う。お互いを干渉しない約束で始めた共同生活は快適だったが、麗子はやがて失踪、跡を追ううち、彼女の二重、三重生活を知る。彼女は名前、化粧、嗜好までも替えていた。茫然とする春海の前に既に死体となったルームメイトが……。

最近、今邑さんは書店でも大きく取り上げられていて、うれしい限りです。
「i (アイ) 鏡に消えた殺人者―警視庁捜査一課・貴島柊志」 (中公文庫)をはじめとするシリーズも、平台に積まれていますし！－－でも、警察小説みたいな副題はちょっといただけないかな、と思います。確かに貴島シリーズではありますが、作品の狙いは警察小説ではなく、海外の某有名作品のようなテイストですから。
この作品はシリーズ外で、やや趣を異にしますが、作者のたくらみが満ちているところは同じです。ホラーと銘打たれている作品は読んでいませんが、今邑さんの作品は、この作者のたくらみ－－読者を騙してやろう、はぐらかしてやろう－－があふれているところが長所だと思います。
この作品は「二重、三重生活」とあらすじにありますが、このことから連想されるネタ （ネット上の感想ではあっさり明かしているものが多いですが、一応隠しておく方がよいと思うので伏せておきます） を中心に据えています。ちょっとたくらみの度合いが強すぎて、リアリティがないというか無理やり感が漂いますが、このネタはもともとリアリティが薄い－－正確に言うと、リアリティうんぬんではなく、身近に感じられない、ということですが－－と思っているので、さらに仕掛けを講じてもらっても、個人的には気にしません。むしろ、無理を押してでもたくらみを仕上げたかった作者の稚気というか意気を好もしく感じます。
ただ、文庫版あとがきに、後味が悪いラストが残っているけど、そういう話が嫌いな人はここで読むのをやめる事をおすすめ、とあって、そのあとにもうひとつエピソードがついているのですが、このエピソードは、後味が悪いということではなくて、このエピソードのようになるメカニズム（？）が、この作中の他のエピソードと整合的ではなく唐突感があること（きっかけがわからないこと）が問題だと思います。
ということで、最後のエピソードを残念に感じましたが、今邑さんらしい一冊として楽しく読み終わりました。

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