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猫島ハウスの騒動 [日本の作家 若竹七海]


猫島ハウスの騒動 (光文社文庫)

猫島ハウスの騒動 (光文社文庫)

  • 作者: 若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/05/12
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
葉崎半島の先、三十人ほどの人間と百匹以上の猫がのんきに暮らす通称・猫島。その海岸で、ナイフが突き刺さった猫のはく製が見つかる。さらに、マリンバイクで海を暴走する男が、崖から降ってきた男と衝突して死ぬという奇妙な事件が! 二つの出来事には繋がりが? 猫アレルギーの警部補、お気楽な派出所警官、ポリス猫DCらがくんずほぐれつ辿り着いた真相とは?

架空の町(といってもモデルがあることははっきりしていますが)葉崎を舞台にしたコージー・ミステリシリーズの1作です。と解説にも、ネットにもコージー・ミステリだとあるのですが、個人的にはコージー・ミステリというにはちょっと違和感があります。
若竹さんといえば毒のある作風でも知られていますが(「悪いうさぎ」 (文春文庫) なんか印象的でした)、その毒がコージーであっても滲み出ているからかもしれません。登場人物も辛口の人が多いですし。
コージー・ミステリとは、という明確な定義があるわけではありませんが(cozyという単語の意味は心地よい、ですから、中身を示唆するものではありませんし)、狭い地域を舞台に主婦探偵が活躍する、というのが典型ではなかろうかと。シリーズ探偵である主婦がストーリーを引っ張っていき、探偵に焦点があたるわけです。
その点、この作品は、舞台こそ狭いですが(なにしろ島ですから)、かなりの多視点なので、探偵役に的を絞らせません。シリーズ探偵でもありません。ストーリーもプロットもかなり複雑です--だからこその多視点なのだと思いますが。この複雑なプロットを、この長さでまとめた作者の腕の冴えにはうれしくなりますが、そのせいで「コージー」の印象が薄れてしまいます。もっと硬質な読後感なのです。
著者自身によれば「小さな町を舞台とし、主として誰が犯人かという謎をメインにした、暴力行為の比較的少ない、後味の良いミステリ--これすなわち、コージー・ミステリです」ということで、こう定義づければあてはまりますが...
実は前作の「古書店アゼリアの死体」 (光文社文庫) でも同じように感じました。好きなシリーズですが、コージー・ミステリとしてにとどまらず、プロットの充実したミステリとして楽しんでいます。
この作品は、タイトル通り猫がいっぱい登場するのですが、ラストを締めくくるのが猫という趣向も、ポイントとしてあげておきたいと思います--この猫、どうやらこの後の作品でも活躍するようですね。
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