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切れない糸 [日本の作家 坂木司]


切れない糸 (創元推理文庫)

切れない糸 (創元推理文庫)

  • 作者: 坂木 司
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/07/05
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
周囲が新しい門出に沸く春、思いがけず家業のクリーニング店を継ぐことになった大学卒業間近の新井和也。不慣れな集荷作業で預かった衣類から、数々の謎が生まれていく。同じ商店街の喫茶店・ロッキーで働く沢田直之、アイロン職人・シゲさんなど周囲の人に助けられながら失敗を重ねつつ成長していく和也。商店街の四季と共に、人々の温かさを爽やかに描く、青春ミステリの決定版。

坂木司といえば、
「青空の卵」 (創元推理文庫)
「仔羊の巣」 (創元推理文庫)
「動物園の鳥」 (創元推理文庫)
のひきこもり探偵三部作ですが、その次に発表されたのがこの「切れない糸」です。
やむなく継いだクリーニング屋の仕事に、周りに助けられながら馴染んでいく様子を描いた連作で、ミステリ的には日常の謎、になります。このタイプの作品は、謎の解決が、主人公を取り巻く状況と重なって、謎をきっかけに主人公がいろいろなことに気づき成長していく、という構図です。
ひきこもり探偵シリーズは、主人公たちの人間関係があまりにもべたべたした少々気持ち悪い感じがして個人的にマイナスでした。この作品でも、最後の方でちょっとべたっというか、ぬめっというかの気配が忍び込んできていますが-というよりも、四話を通して、徐々にこの方向に持っていくのが、この短編集の狙いの一つなのかもしれません-、なんとか(こちらの許容範囲に)踏みとどまってくれたように思います。この辺は個人的なもので、こういうべたべた感が好きな人もいると思います。
一方で、商店街における人間関係=ときにおせっかいともいわれそうな濃密さ、の良さは伝わってきます。こちらの人間関係については、それを嫌だと考える人物もきちんと登場し、バランスをとっています。
派手な事件はまったくありませんし、謎らしい謎もない(ミステリらしい逆転の発想的なものもありません)ですが、クリーニング屋をめぐる豆知識も身に付きますし、商店街のぬくもり賛歌として、青年の成長物語として楽しむには手頃でよいと思います。


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