狼の帝国 [海外の作家 か行]
<背表紙あらすじ>
パリに住むアンナは不可解な記憶障害に苦しんでいた。高級官僚である夫は、脳の生検を勧めるが……。同じパリの街で不法滞在のトルコ人女性たちが次々に顔をつぶされた死体となって発見された。この猟奇事件がアンナの記憶障害と奇妙に交錯し、驚くべき真実が明らかになる! 世界的大ベストセラー『クリムゾン・リバー』のグランジェが、ふたたび世界のミステリ界を震撼する!
「クリムゾン・リバー」 (創元推理文庫)、「コウノトリの道」 (創元推理文庫) につづくグランジェの3冊目の邦訳です。積読にしている間に、どうも絶版(品切れ)になっているようですね。おもしろいのに、もったいない。
記憶障害のアンナの話と、トルコ人女性連続殺人の話がどう結びついていくのか、という展開ですが、相変わらずの筆力で、ぐんぐん引き込まれました。
ストーリーの中心となるアイデア(背景?)は、「クリムゾン・リバー」 (創元推理文庫)や「コウノトリの道」 (創元推理文庫) のようなとんでもないもの、突拍子もないものではなく、常識的なものだと思うのですが、それでも、登場人物の絡み方や扱い方は意外性抜群で、やはりグランジェはくせもの(褒め言葉です)です。
アメリカの小説でよくある、イスラム世界対キリスト世界という構図ではなく、トルコの民族主義の話は新鮮でしたが、フランスにおける移民問題の激しさを表しているのでしょうか? それを題材にこれだけ力強いストーリーを展開してくれたので、一読者としてはどういう組織であろうと構わないのですが、ミステリ、小説を離れて、すこし現実の問題として気になりました。
ところであらすじ末尾の「震撼する」は「震撼させる」ではないでしょうか?
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