ミステリ講座の殺人 [海外の作家 な行]
<表紙袖あらすじ>
著名女流作家の邸宅に「ミステリ講座」と称して集められた人々。
ある夜、「天の声」と呼ばれる鐘の音に、人々はたたき起こされた。
そこで秘書の老女が殺されていた。
なぜ犯人は殺害後にあえて鐘など鳴らしたのか。
そして老女が死ぬ前に語っていた謎めいた言葉の意味は…。
黄金時代の名バイプレーヤーによる本格推理、ついに邦訳!
原書房によるヴィンテージ・ミステリ・シリーズの1冊。原著は1937年。
まったく聞いたことのない作家の作品が読めるなんて、ちょっとわくわくします。このシリーズは順に買い揃えています。
タイトルでは「ミステリ講座」ですが、別にカルチャー・スクールのようなそういう教室があるわけではなくて、 ミステリ作家の屋敷に集まっているという設定です。ちょっとこの邦訳のタイトルは安っぽい感じがします。この作品は、お屋敷ミステリの体裁ですから、ちょっとそぐわない。それに、キャロリン・G. ハート「ミステリ講座の殺人」 (ミステリアス・プレス文庫)という作品が既にあって、そちらは既に絶版とはいえ、別の題名にしてほしかったところです。
巻末に「手がかり索引」がついているのが売りのようです。でも、そこに期待するとちょっと肩透かしかと思います。29個の手がかり、といいながら、具体性に乏しいというか、そんなものまで手がかりにカウントする? というようなものも混じっていますから。
捜査らしい捜査、推理らしい推理もあまりありませんし、真相もちょっと平凡な印象。「ヴィンテージ」という風格にはいたっていないように思いました。
ただ、犯人が鐘を鳴らした理由とか(原題はこの鐘が由来です)、銃撃事件の真相とか、本格ミステリならではの光る部分もあるので、また、邦題に「ミステリ講座」とあるように、ところどころにミステリをめぐる発言もちりばめられていますし、つまらないわけではありません。なんだか惜しいなぁ、という印象を持ちました。
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