死の舞踏 [海外の作家 ヘレン・マクロイ]
<表紙袖あらすじ>
12月、雪のニューヨーク。その夜、一体の異様な死体が発見された。
雪のなかに埋まっていた若い女性の死体は、なんと熱かったのである!
精神科医ベイジル・ウィリング博士が捜査に乗り出し、娘のお披露目パーティにすべてをかける義母や軍需品会社の経営者、ゴシップ記者といった人物による無意識の行動をつぶさに検証する。その先に浮かぶ恐るべき意図とは?
サスペンスや短編にも長けたマクロイのデビュー作にして、傑作本格。
ベイジル・ウィリング初登場作品、ここに刊行。
単行本です。
論創海外ミステリの1冊。かなり渋い選択でいっぱい海外ミステリを翻訳してくれているありがたい叢書です。
おかげさまでマクロイのデビュー作を読むことができました。
あらすじにも書かれていますが、帯にも「雪に埋もれた熱い死体!」とあって、まるで不可能犯罪トリックがあるかのような打ち出し方ですが、雪の中で熱射病で死ぬ、という謎は、取り立てていうこともない解決ですし、かなり早い段階であっさり解明されてしまいますので、あらすじや帯でスコープを当てる必要はなかったのではないかと思います。それよりも、その小道具的な解決から導き出されるプロットの素晴らしさこそが本作品の特徴だと思います。このプロットは、アガサ・クリスティのある作品を髣髴とさせるもので、十分楽しめました。
「どんな犯罪にも、心理的な指紋がのこされているものなんですよ」(P.12)というウィリング博士の推理方法は、きちんと証拠に裏打ちされているもので、安心して読めます。
手がかりのひとつが、翻訳のせいで台無しになってしまっているのがとても残念ですが、本格ミステリとしてきちんと構築されていると思います。
当時の社交界の様子がわかるのも楽しい。あの頃から、ダイエットは女性にとっての一大テーマだったのですね。現在にも通用する作品だと思います。
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