ギルフォードの犯罪 [海外の作家 F・W・クロフツ]
<裏表紙あらすじ>
ロンドン有数の宝石商ノーンズ商会の役員たちは、ギルフォードに参集した。ところが夜のうちに経理部長が殺され、さらにつづいて会社の金庫から、50万ポンド相当の宝石類が紛失していることが発見される。経理部長の死と紛失した宝石類──二つの謎はどう関連しているのか? 堅固なアリバイを持つ容疑者たちに対する、フレンチ首席警部の執拗な捜査を描いた力作長編。
創元推理文庫が毎年やっている復刊フェアで、クロフツは常連となっており、この作品も2009年の復刊です。この年は文庫創刊50周年記念だったようです。この調子で全部読めるようになるとうれしいですね。いまAmazonでチェックすると、本書は再び絶版になっているようですが...
金庫からの宝石盗難事件と、一見自殺に見える死亡事件が扱われています。
フレンチ主席警部は凡人型とよく言われますが、推理そのものはぽんとひらめくことが多いので、努力型ではあっても実際のところは天才型とあまり変わらないのではないかと思います。ただ、小刻みに捜査が進展することで、ひらめきとひらめきの間が写実的というか、派手なところがなくじっくりなので、凡人タイプといわれるのではないでしょうか? そしてクロフツの作品はこのつなぎの部分が読みどころのひとつだと思います。
たとえば、金庫盗難事件の鍵をめぐるトリックは、果たして実行可能なのかどうか疑問に思うところもありますが、このつなぎ部分が隙間を着実に埋めていく雰囲気を醸していて、なんとなく現実的なトリックであるように思えるところなど特徴的かと思います。
最後にすっと舞台が広がるところもクロフツらしい作品です。
手堅い本格ミステリとして、なかなかよかったと思います。続けてほかの作品も復刊してくださいね。
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