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晩夏 [日本の作家 さ行]


晩夏 (創元推理文庫)

晩夏 (創元推理文庫)

  • 作者: 図子 慧
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2010/10/28
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
夜が明けても伯母は帰らなかった。今泉酒造の奔放な家付き娘ながら、無断外泊は一切したことのないあの伯母が。愛する瑞生の美しい横顔をみつめながら、想子は不安にとらわれる。彼は、何を知っているのか――。夏の気怠い空気の向こうに次第に浮かび上がる、殺人事件の意外な真相とは。実力派作家が夏の終わり、少女の時間の終わりを繊細な筆致で綴った上質な青春恋愛ミステリ。

作者の図子慧さんは、「クルト・フォルケンの神話」で第8回コバルトノベル大賞を受賞してデビューした作家です。このデビュー作、読んでいます。コバルト文庫で抱くイメージとは少し違う、ミステリアスな雰囲気をたたえた作品だったと思います。
この作品「晩夏」は、巻末に「本書は一九九一年、集英社より刊行された作品に加筆したものです」とあって、なんとほぼ20年ぶりに文庫化されたものです。
造り酒屋という舞台がレトロですが、20年の歳月はそんなに感じさせませんね。今の作品といわれても、違和感ないかも。すれていない若者自体が時代だ、と言われたらそうかもしれませんが...
ミステリとしては、割と典型的なパターンにあてはまっています。瑞生が隠していることも、おおかたの読者の想定通りではないでしょうか。もっとも、瑞生の視点をとっているパートもあり、かなり微妙な筆さばきを必要とするチャレンジングなストーリーですが。
この作品の最大のポイントは、想子の瑞生への思いです。子どもでもない、大人でもない年代というか、子どもから大人へと移り変わる狭間の時期のゆらめきを、事件を通してすくい取って、そうっと読者に差し出したかのようなたたずまいで、これがこの作品の魅力です。なので、ミステリ的な効果なども考えた上での、かなりの多視点なのだと思いますが、もっと視点人物を絞ってもよかったように思います。
なかなかだったので、作者のほかの作品も読んでみることにします。
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