鉤爪の収穫 [海外の作家 か行]
<裏表紙あらすじ>
やあ、ごふさた。恐竜探偵ルビオが帰ってきたぜ。ハーブ中毒は治っちゃいないが、しがない探偵稼業は続けている。今度の依頼は恐竜マフィアのボスからで、ある男を尾行するうち、なぜだかマイアミくんだりまで行くことに。だが、そこでガキのころ苦楽を共にした旧友ジャックと再会できた。今じゃマフィアのボスだっていうからびっくりだ。やつの妹とも再会したわけだが、これがまた昔わけありの女で……。あいにくジャックと雇い主は血で血を洗う抗争の真っ最中、どちらの側にも義理立てすりゃあ、当然のっぴきならない羽目になり――。好評ハードボイルド・シリーズ第3弾!
「さらば、愛しき鉤爪」 (ヴィレッジブックス)、「鉤爪プレイバック」 (ヴィレッジブックス) に続く恐竜ハードボイルド第3弾。奥付を見ると、2005年に出版されていまして、シリーズの前2作がとてもおもしろかったので、本当に待ち望んで飛びつくように買ったのに、結局6年以上も積読...反省しています。
恐竜がヒトの扮装を着て人間に混じって暮らしている世界(!)を舞台にしたハードボイルドです。人間に気づかれないディテールもあれこれ作りこまれていて、感心するやら、呆れるやら。まあ、ばかばかしいと言ったらばかばかしい設定なのですが、中身のほうはきわめて真っ当なハードボイルドです。ご安心を。ちなみに、第1作の「さらば、愛しき鉤爪」 (ヴィレッジブックス)は、「このミステリーがすごい! 2003年版」の第7位でした。
今回のモチーフは、日本語タイトルから推察ができると思いますが、ハメットの「血の収穫」 (創元推理文庫)です--「赤い収穫」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)という訳題もありますが、「の」を使っている「血の収穫」 の方が連想しやすいですね。
ひとつの都市を舞台にしたマフィア組織同士の対立とそこへやってきた私立探偵という構図で、ミステリひとつの定番ですが、片側の組織のトップが探偵の幼馴染というのが、本作品のポイントとなっています。
渋いハードボイルドが好きな人は敬遠されるかもしれませんが、いかにもなハードボイルドな話が、恐竜というフィルター(?)を通すことでユーモラスな色彩を帯びるところがこのシリーズの読みどころのひとつだと思います。もちろんそれには、語り手であるルビオの余裕ある語り口が一役買っています。折り目正しいハードボイルドのプロットが、どのように印象を変えて見えるのか、楽しんで読める作品だと思います。
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