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震災列島 [日本の作家 あ行]


震災列島 (講談社文庫)

震災列島 (講談社文庫)

  • 作者: 石黒 耀
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/01/15
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
名古屋で地質会社を営む明石真人は、東海・東南海地震の連続発生を予測。地震による大津波を利用して、娘の仇を討つべく復讐計画を練り上げる。そして数ヵ月後、ついに東海地震が発生。浜岡原発の炉心融解を目前に、復讐劇の幕が開く。最新の研究データに基づく大災害小説。そのとき、人は、生き様を問われる。

著者の石黒耀さんは、前作「死都日本」 (講談社文庫) で第26回メフィスト賞を受賞してデビューした作家です。「死都日本」 は火山を扱っていましたが、今回は地震&津波です。「死都日本」 は読了後あまりのおもしろさに周りの人に勧めまくったほどだったので、この作品も2010年1月に文庫化されてすぐに買ったのですが、例によって積読...
今頃読んでいますが、2004年に発表されていますので、昨年3月の東北を襲った地震はもとより、新潟県の中越地震よりも前に書かれたものです。
前作は災害を描くことに主眼があったのに対して、この「震災列島」 (講談社文庫) は災害を主人公が利用しようとするストーリーとなっていて、ちょっと期待していたのとは違ったかな、という印象。なので、クライシスノベルではあっても、主人公とヤクザの戦いを描いた作品という位置づけになると思います。かなりのページを割いてはいるものの、地震・津波はあくまで遠景、といったところでしょうか?
このメインの部分(復讐物語)には正直あまり感心しませんでした。平凡な感じです。天災を利用するというアイデアも、アイデアとしてはよいのかもしれませんが、思い通りに、狙い通りにいかないだろう、と思えますし(何しろ特定の場所に津波がやってくる時間まで予測するのです)、東北地方太平洋沖地震を経た今となっては、なおさら人間の計算通りに物事はいかない--従来の頭の堅い地震学者やお役所の計算だろうと、主人公の計算だろうと--という思いを強くしてしまいます。自然災害をミステリに使う場合としては、震災が起こることを利用するのではなく、震災が起きたことを利用するのが無理がなさそうです。あるいは、阪神淡路大震災を扱った谺健二さんの「未明の悪夢」 (光文社文庫) のような形がよいのかもしれません。
とはいえこの作品、遠景と表現した災害をめぐる部分は非常におもしろく、興味深く読みました。地震のメカニズム、予知問題、惹起される津波、そして原発と盛りだくさんです。超弩級の東北地方太平洋沖地震を知った後で読んだので、その通りだなあ、と思ったり、いやいやこんなに甘くないと思ったり、場所場所で感慨は異なりますが、圧倒されます。600ページを超える大作ですが、ぐんぐん読み進めることができました。
災害に焦点をあててもらえると個人的にはうれしいのですが...次作の「富士覚醒」 (講談社文庫) もすでに購入済みですので、楽しみにしています。

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コメント 2

まっきー☆

思わず「浜岡原発」の文字に目が釘付けになりました・・・。本当に津波が襲ったら? ワタシの住んでいるところも流されるでしょう。(^^; 仮想というか予行演習として拝謁したいと思います。(苦笑)
by まっきー☆ (2012-01-28 11:14) 

31

まっきー☆さん、コメントありがとうございます。
この作品では、浜岡原発を襲うのは津波ではなく、地震という設定でしたが、深刻であることに変わりはないですね。
東北地方太平洋沖地震の後に読んだので、一層リアルに読めたのかもしれません。
by 31 (2012-01-29 22:09) 

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