石のささやき [海外の作家 か行]
<裏表紙あらすじ>
姉が壊れはじめたのは、幼い息子を亡くしてからだった。すべてが取り返しのつかない悲劇で幕を下ろしたあと、私は刑事を前に顛末を語りはじめる……。破滅の予兆をはらみながら静かに語られる一人の女性の悲劇。やがて明かされる衝撃の真相。人の心のもろさと悲しみを、名手が繊細に痛切に描き出した傑作。
2007年週刊文春ミステリーベスト10 第3位。ちなみに、「このミステリーがすごい! 2008年版」では第18位。かなり順位に差がありますが、まあこの種のベスト10の順位は厳密なものではないので...
トマス・H・クック のいつもの作品のパターンにのっとってストーリーが語られていきます。
語り手が、少しずつ少しずつ、ゆっくりゆっくりとベールをはいでいくように過去を回想します。読者は、もどかしく感じながら読み進めることとなります。語り手はどうやら警察につかまっているようで、さて、何を、どんな事件をしでかしたのだろう、ということも気になります。
姉弟を強力に支配していた心を病んでいた父。その父親が死に、幸せに暮らしていた姉ダイアナ。ところが姉の愛息ジェイソンが死んでしまって、姉は夫マークが殺したのだと言い...姉は語り手デイヴの娘パティを取り込んでいく。
クックお得意の“家族の悲劇”で、重いです。後味も爽快では決してありません。取り調べ室のシーンと回想シーンが交互に並べられているのですが、その2つが融合するラストシーンは、重いを通り越して怖くなります。わかりきっている、という読者もいると思いますが、帯にある通り「最後に明かされる真相の衝撃」だと感じました。
一箇所、気になっているところがあります。84ページの最後の行。「それで、わたしは言われたとおりにした。」とあるのですが、ここは、「それで、おまえは言われたとおりにした。」ではないでしょうか? ここだけ、「おまえ」が「わたし」になっている意味がわからなくて悩んでいます。どなたか、お分かりになる方、教えてください。
2012-01-17 10:39
nice!(4)
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0