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災厄の紳士 [海外の作家 た行]

災厄の紳士 (創元推理文庫)

災厄の紳士 (創元推理文庫)

  • 作者: D・M・ディヴァイン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/09/30
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
根っからの怠け者で、現在ではジゴロ稼業で糊口を凌いでいるネヴィル・リチャードソンは、一攫千金の儲け話に乗り、婚約者に捨てられた美人令嬢のアルマに近づく。気の強いアルマにネヴィルは手を焼くが、計画を仕切る“共犯者”の指示により、着実にアルマを籠絡していく。しかしその先には思わぬ災厄が待ち受けていた……。名手が策を巡らす、精巧かつ大胆な本格ミステリの快作。

「本格ミステリ・ベスト10 2010」(原書房)第1位。ちなみに、「このミステリーがすごい! 2010年版」では第14位です。
この前に翻訳された「ウォリス家の殺人」 (創元推理文庫)が、「本格ミステリベスト10 2009」(原書房)の第1位(ちなみに、「このミステリーがすごい! 2009年版」では第10位)、さらに前の「悪魔はすぐそこに」 (創元推理文庫)が、「本格ミステリ・ベスト10 2008」(原書房)の第2位(こちらもちなみに、「このミステリーがすごい! 2008年版」では第5位)なので、本格ミステリとして定評のある作家です。
なんですが、オープニングは本格ミステリっぽくありません。結婚詐欺を狙っているかのような青年ネヴィルの視点ではじまります。狙われているのは作家の令嬢アルマ。単なる結婚詐欺ではなさそうな描写もそこかしこにあって、気になります。
ネヴィルの性格が、いかにも軽そうに設定されていて、それはそれで楽しく読めるものの(時代感はあっても、あまり違和感なく読めました)、あれれ? 本格ミステリじゃないんだろうか、と不安に(?)なりますが、大丈夫、途中でしっかり本格ミステリに変わります。
もう一人の視点人物サラは、アルマの姉で、被害者家族(?)の癖のある人物たちをじっくり紹介していきます。
そして発生する事件、ということで、いよいよ本格ミステリの幕開け、です。視点も、ネヴィルとサラから、サラと捜査するボグ警部へ移ります。
登場人物が非常に限られているので、犯人(ネヴィルの黒幕と事件の犯人の2種類の犯人です)をつきとめるのはそんなに難しくはないのですが、本格ミステリらしからぬネヴィルのエピソードすらをも本格ミステリの枠組みに奉仕させている作者の手腕を存分に楽しみました。
ネタバレにならないようぼかした書き方となってしまいますが、手掛かりの使い方には、素直にすごいなー、と感嘆しました。派手なトリックはなくても、十分たのしめるお得な本格ミステリです。
年に一冊ずつ翻訳されていますが、これからも翻訳を続けてほしいです。
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