鏡の迷宮、白い蝶 [日本の作家 た行]
<裏表紙あらすじ>
「水島のじいちゃん」の名代で、西遠寺家の人々とともにかのこの許嫁の家の別荘へ向かうことになった修矢。招かれた別荘の隣には、万華鏡作家が住んでいた。認知症を患うその人は、所持している大きなダイヤの隠し場所をメモしていたのだが……。中学生の美波と高校生の修矢。二人がそれぞれ出あった少し切ない事件たちを描く本格ミステリ短編集。人気シリーズ、前日譚第二弾。
「天使が開けた密室」 (創元推理文庫)、
「龍の館の秘密」 (創元推理文庫)、
「砂の城の殺人」 創元推理文庫、
とシリーズは続いてきて、その前日譚として、
「手焼き煎餅の密室」 (創元推理文庫)、
が出ていて、本書はその第2弾です。
今は亡きおじいちゃんが出てくるわけですが、おじいちゃんがその後死んでしまうことを読者は知ってしまっているので、不思議に乾いた感覚というべきものが漂っているのが特徴でしょうか。
中学生と高校生が表に出て、後ろに控えているのはじいちゃん、となると、やわな「日常の謎」かな、と思いがちですが、いえいえ、ライトな手触りでもきちんと骨格のそなわった本格ミステリです。
もちろん、「日常の謎」となっている作品もありますが、あっけなく解かれてしまう日常に埋没した作品とは違い、きちんとミステリとして解かれますので、ミステリファンにも安心して読んでもらえると思います。
冒頭の「イタリア国旗の食卓」がいい例です。特定の人物に特定も皿をサーブする、というのは毒殺ミステリでよく取り上げられる趣向ですが、トリッキーな解決が提示されます。現実問題として、そんな(犯人の)狙い通りにいくかなぁ、と疑問を抱く人もいるかもしれませんが、ミステリとしての説得力十分。
谷原さん、次はどんな作品を見せてくれるのか、楽しみです。
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