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ボトムズ [海外の作家 ら行]

ボトムズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ボトムズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: ジョー・R・ランズデール
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2005/03/24
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
80歳を過ぎた今、70年前の夏の出来事を思い出す――11歳のぼくは暗い森に迷い込んだ。そこで出会ったのは伝説の怪物“ゴート・マン”。必死に逃げて河岸に辿りついたけれど、そこにも悪夢の光景が。体じゅうを切り裂かれた、黒人女性の全裸死体が木にぶらさがっていたんだ。ぼくは親には黙って殺人鬼の正体を調べようとするけど……恐怖と立ち向かう少年の日々を描き出す、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。

ランズデールは、「罪深き誘惑のマンボ」 (角川文庫)で日本での紹介の始まったストレートの白人ハップとゲイの黒人レナードのシリーズで有名でしたが、この「ボトムズ」からはシリーズを離れた作品の紹介が増えました。
「ボトムズ」は、MWA賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)最優秀長編賞受賞作です。
1933年から1934年というはるか昔のテキサス南部を回想し、少年ハリーの成長を描いた作品です。
子供(少年)を扱った作品、回想する作品というのはもともと好きなジャンルではありますが、非常に引き込まれて読みました。
ランズデールがずっと書いてきている黒人差別も取り上げられています。黒人差別が日常であった時代背景で、理髪師でありながら、治安官(コンスタブル)もつとめる父親ジェイコブが、黒人に対して公平であろうとしているところが大きなポイントになっています。医者は黒人の死体を解剖するのを嫌がるし、ジェイコブは公平であろうとするがゆえに、黒人びいきだと非難されます。
ハリーは、そんな父親を尊敬していることが伝わってきますし、父親の挫折(どんな挫折かは実際に読んで確かめてください)もハリーの成長を促す要素になっています。
成長物語としてだけでもたっぷり楽しめます。
ミステリとしては、読み終わってからプロローグを読み返すと、何気ない文章が意味ありげに見えました。
解説の中の、読了後に読むようにと指示つきの部分で佳多山大地さんが指摘されている部分も、このプロローグで匂わされているような気がします。ノスタルジックな雰囲気そのものもミステリに奉仕している、そんな大きな枠組みを感じました。
MWA賞にふさわしい名作だと思います。

<おまけ>
タイトルとなっているボトムズというのは、サビーン川流域の低湿地のことです。ひょっとすると、bottomというのは底辺とか下層という意味があるので、差別の対象となっている黒人を指してもいるのかもしれない、なんて考えたりもしました。
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