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首無の如き祟るもの [日本の作家 三津田信三]

首無の如き祟るもの (講談社文庫)

首無の如き祟るもの (講談社文庫)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/05/14
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
奥多摩の山村、媛首(ひめかみ)村。淡首(あおくび)様や首無(くびなし)の化物など、古くから怪異の伝承が色濃き地である。三つに分かれた旧家、秘守(ひかみ)一族、その一守(いちがみ)家の双児の十三夜参りの日から惨劇は始まった。戦中戦後に跨る首無し殺人の謎。驚愕のどんでん返し。本格ミステリとホラーの魅力が鮮やかに迫る。「刀城言耶」シリーズ傑作長編。

「刀城言耶」シリーズ第3作です。第2作の「凶鳥の如き忌むもの」 (講談社ノベルス)が未だ文庫化されていないので、刊行と読む順番が違ってしまいました。さらに次の第4作「山魔の如き嗤うもの」 (講談社文庫)も文庫化されていますので、逆転は続くのかも...
「2008 本格ミステリ・ベスト10」(原書房)第2位、
「このミステリーがすごい!  2008年版」(宝島社)第5位、
2007年週刊文春ミステリーベスト10 第6位
です。
第1作「厭魅の如き憑くもの」 (講談社文庫)も大部でずっしりしていましたが、今度も分厚い本です。
「厭魅の如き憑くもの」 は力の入った力作ではあるものの、そしてミステリの趣向には素直に感心できたものの、なんだか読みづらかった記憶ですが、「首無の如き祟るもの」はぐっと読みやすくなったように思います。こちらが慣れたせいかな? それでもまだ文章的には粗いところがありますね。時代設定の雰囲気のためではないと思うので、書き進めていかれるにつれてもっとこなれてくることを期待します。「鑑みる」という語の使い方も気になりました。「~を鑑みる」という用法がされていますが、「~に鑑みる」と使うべき語ではないでしょうか?
冒頭に刀城言耶による「編者の記」があって、そのあとすぐに媛之森妙元(高屋敷妙子)による「はじめに」が置かれ、物語は媛之森妙元による幕間をはさみながら、少年・幾多斧高と駐在高屋敷元の視点で交互に語られるという、非常に「語り」を意識した作品で、十分にその効果が発揮されていると思います。
これでもかという不可能な状況や不可思議な謎が積み重ねられていくのですが、一つの事実をキーにして、全部が一気に説明されてしまうという構図がとてもすばらしい。そして、その事実を覆い隠すためのミス・ディレクションが、幾重にも張り巡らされているのが、またすごい。なにより、江川蘭子という名前の作家を登場させるなど、虚実とりまぜたメタっぽいミス・ディレクションには作者の強い気概を感じます。
密室状況の解明も、首切り死体の解明もすっきり合理的です。特に、首を切った理由と、その首が戻ってくる理由が、上述の構図と不可分の切れ味で、ミステリ・ランキングで上位に入るのも納得のレベル。
因習の村、因習の家系を舞台にしたミステリとしても十分おすすめできますが、その枠組みの外(?)で、「語り」の効果が存分に発揮されるラストも堪能しました。
最後の最後に掲示されている雑誌に、実在の作家の架空の作品が挙げられているのにはニヤリ。オリジナルの題名はなんだろうな、と考えて楽しい時間を過ごせました。
充実した本格ミステリとしておすすめします。

本筋とは関係ない気になったところ。
第21章「首の無い屍体の分類」で 類別トリック集成 (江戸川乱歩の「続 幻影城」にリンクをはっておきます)みたいなのをやっているのですが、その第六項目に掲げられている例は、あの海外の大傑作 "アレ" (←ネタバレになるのでタイトルは伏せておきます。クリックするとその作品の amazon.co.jp のページに飛びますのでご注意ください) ですよね。"アレ" は大好きな作品なので、うれしくなりました。でも、"アレ"が最初の作例だと思うのですが、「首無の如き祟るもの」には明確な年が書き込まれていないので(読み落としていたらすみません)断言できませんが、時代設定の頃には翻訳されていましたっけ? 1960年にポケミスで出版されたのがはじめだとすると未だなんじゃないかなぁ、と思ったりしました。この「首無の如き祟るもの」の価値にはまったく影響を与えない枝葉末節ですが、メモしておきます。

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