悪党たちは千里を走る [日本の作家 な行]
<裏表紙あらすじ>
しょぼい仕事で日々を暮らすお人好しの詐欺師コンビ、高杉と園部。ひょんなことから切れ者の美人同業者とチームを組むはめになり、三人で一世一代の大仕事に挑戦する。それは誰も傷つかない、とても人道的な犯罪計画だった。準備万端、すべての仕掛けは順調のはずだったが……次から次にどんでん返しが! 息をつかせぬスピードとひねったプロット。ユーモア・ミステリの傑作長編。
この作品、幻冬舎文庫からも出ています。」
貫井徳郎の今回の作品はコメディ・タッチ。
非常にあらすじを紹介しにくいのですが、幻冬舎文庫のあらすじでは、犬の誘拐、という単語が使われているので、誘拐ミステリであることは紹介してもいいでしょうか?
ホントにだめな詐欺師が計画する犬の誘拐。当然、どんどんあらぬ方向へ進みだして...という展開です。この展開の妙が本書の一番のポイントなので、あまり詳細なあらすじはないほうがよいでしょう。
解説によると、トニー・ケンリックの「リリアンと悪党ども」 (角川文庫)をヒントにした、とのことなので、なんとなく方向性はおわかりいただけるかもしれません。
とはいえ、誘拐ミステリとくれば、眼目のひとつは身代金の受け渡し。派手さがなく、おお、と驚いたりするものではありませんが、その分現実的な手法で、さすがは貫井徳郎、という感じがしました。ネタバレを避けるため、ぼやっとした言い方になりますが、いろいろある誘拐のパターンの中でこの作品のパターンでしか有効でない金の受け取り方である点は、ポイントが高いのではないでしょうか。
ラストへ向けての展開は、やはり「リリアンと悪党ども」 なんだな、と実感しました。
貫井徳郎といえば重苦しいミステリばかり、と思っている方、ぜひ読んでみてください。
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