警官の証言 [海外の作家 は行]
<表紙袖あらすじ>
競売会で競り落とした一冊の古書から、ある屋敷に財宝が隠されていることが明らかになった。アデア少佐はメンバーを集めて宝探しを始める。ほどなく財宝の一部と見られる宝石が見つかったが、その直後に少佐は密室で殺害される……。
第一部はワトスン役のアントニー・パードンの一人称で、第二部はビール主任警部の一人称で描かれており、それが密室トリックに関係している緻密に計算された英国本格ミステリ。
ルーパート・ペニーの作品を読むのは2冊目で、「甘い毒」 (国書刊行会 世界探偵小説全集 (19))以来なのですが、笑いたくなるくらい地味ですねぇ。あっ、誤解のないように言っておかないといけませんが、地味、というのは決してけなしているわけではありません。いかにもなクラシック・ミステリなのでかえってうれしくなってしまうくらいです。
帯に「密室ミステリ史に輝く逸品」「幻の作家ペニーの代表作」とありまして、売りは、読者への挑戦と密室ということのようです。
とはいえ、密室トリックが優れているわけではありません。トリックはたいしたことなくても、そのトリックを成立させるために周りにちりばめられた細かい技の数々が素晴らしいのです。あらすじはちょっと明かしすぎですが、書かれてしまっているのでそれに便乗してここでも書いてしまいますが、第一部と第二部で語り手が変わって、謎解きの段階で探偵が語り手をつとめるという本格ミステリでは珍しい趣向が、その密室に絡みついているところは本当に立派だと思います。この辺りは現代にも通じるポイントですね。
宝探しの部分も、ちゃんと暗号解読が最後にされていて、親切ですね。もっとも、暗号そのものにはあまり興味がないので、ぼくは読み飛ばしてしまいましたが...
ルーパート・ペニーの別の作品が翻訳されたら、きっとまた読むことでしょう。
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