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1/2の騎士 [日本の作家 初野晴]

1/2の騎士 (講談社文庫)

1/2の騎士 (講談社文庫)

  • 作者: 初野 晴
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/01/15
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
“幸運のさる”を見つけた中学生が次々と姿を消し、盲導犬は飼い主の前で無残に殺されていく――。狂気の犯罪者が街に忍び寄る中、アーチェリー部主将の女子高生・マドカが不思議な邂逅を遂げたのは、この世界で最も無力な騎士だった。瑞々しい青春と社会派要素がブレンドされた、ファンタジックミステリー。

「水の時計」 (角川文庫)「漆黒の王子」 (角川文庫)に続く第3作です。
今回の作品にもファンタジックな設定が取り入れられています。それが、タイトルにもなっている騎士「サファイア」。物語の底流は、ボーイ・ミーツ・ガールで、ここがあらすじでいう瑞々しい青春にあたります。
社会派要素という方の底流は、マイノリティ、でしょうか。
ミステリとしても非常によくできています。
全体の構成は連作長編のようになっていて、
「騎士叙任式 もりのさる」
「序盤戦 Dog Killer -ドッグキラー-」
「中盤戦 Invasion -インベイジョン-」
「終盤戦 Raffesia -ラフレシア-」
「一騎打ち GrayMan -グレイマン/灰男-」
と、それぞれのエピソードでいずれも異常者との対決が描かれます。ファンタジックな外装に似合わず、描かれている事件はとても現実的で、このあたりも社会派的とされる要素なのかもしれません。
中では「中盤戦 Invasion -インベイジョン-」の真相が印象に強く残ります。女性の一人暮らしの部屋に忍び込むストーカー(?)を扱っているのですが、その狙いにはたいていの人が唖然とするのではないでしょうか? 全然作風は違うのに、初期の泡坂妻夫を思い出したりもしました。
畳み掛けるように緊迫度が上がっていく、「終盤戦 Rafflesia -ラフレシア-」、「一騎打ち GrayMan -グレイマン/灰男-」もサスペンスフルで、特に「一騎打ち GrayMan -グレイマン/灰男-」では、ミステリとしては典型的なサイコ犯ながら、サファイアの姿が気になって、気になって。ミステリとしてのクライマックスが、ボーイ・ミーツ・ガールのクライマックスと重なって、迫力あります。
主人公マドカの成長物語としての側面は、「後日談 ふたりの花」でフォローされていて、力強い一歩を踏み出す姿には、がんばれと声をかけたくなりました。

「通りすがり」さんがこの作品について「本書は、犯罪が起こってそれを解決するという、まあ本格ミステリのような感じの作品ですけど、本格ミステリとは明らかに違う点が一点。それは、どの犯罪者も、不特定多数の対象を狙っている、という点」「本格ミステリっぽいストーリーで、不特定多数の対象を狙う犯罪を扱うというのはなかなか珍しい」と指摘されていて、鋭いなぁ、と思いました。気づいていなかった...そういう意味でも注目の作品だと思います!
タグ:初野晴
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