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ベンスン殺人事件 [海外の作家 た行]


ベンスン殺人事件 (S・S・ヴァン・ダイン全集1) (創元推理文庫)

ベンスン殺人事件 (S・S・ヴァン・ダイン全集1) (創元推理文庫)

  • 作者: S・S・ヴァン・ダイン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/02/21
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
証券会社の経営者ベンスンがニューヨークの自宅で射殺された事件は、有力な容疑者がいるため、解決は容易かと思われた。しかし捜査に、尋常ならざる教養と才気をもつファイロ・ヴァンスが加わり、事態は一変する。物的・状況証拠を否定するヴァンスが用いる、心理学的推理とは?巨匠のデビュー作にして、米国本格ミステリ黄金時代の幕開けを告げた記念碑的傑作、新訳で登場。

うわぁ、もう出ないんじゃないかと思っていた、ファイロ・ヴァンスシリーズ新訳が出た!
第1弾の「僧正殺人事件」 (創元推理文庫)が出たのが2010年4月で、2011年の10月に書いたブログでも(リンクはこちら)続きが出ないな、と書いていた、シリーズ新訳が出ました。ほぼ3年ぶり...この「ベンスン殺人事件」 はデビュー作なので、今後はシリーズ刊行順に出るのかな?
「ベンスン殺人事件」 は、瀬戸川猛資さんの「夜明けの睡魔―海外ミステリの新しい波」 (創元ライブラリ)で、触れられていまして、ファイロ・ヴァンス初登場のセリフが紹介されています。このセリフ、確認したかったんですよね。
「こんなふうに庶民並みに早起きしたもので、疲れてね」(P17)
うーん、確かに、すごい上から目線この上ないセリフで初お目見えしたんですねえ。瀬戸川さんのおっしゃる通り、嫌な奴(笑)。
ところが、そのあと、早起きしたことを受けて、
「それにしても、なんとも理不尽な時間だよ! 誰かに見られたらどうしよう」(P28)
なんて言うので、おかしくなってしまいました。なんか、お茶目(本人にはそんな意識ないでしょうが)。
なんにせよ、瀬戸川さんご指摘のこのせりふが確認できて満足です。

さて、ファイロ・ヴァンスといえば、心理的推理。
「真相を知るには、犯罪の心理的要因(ファクター)を分析して、それを人物に適用するしかないんだよ。唯一ほんとうの手がかりになるのは、心理的なものだ--物的なものじゃなくて」(P90)
という通りで、後期の作品では、その印象は薄くなっても、第1作のこの「ベンスン殺人事件」 では、心理的探偵法一本やりで、ブイブイ言われていたのだろう、と、そんな風に思っていました。
今回読み返してみて、びっくり。
確かに、心理的に犯罪を眺めてはいますし、証拠にとらわれる警察をバカにしきってはいますが、意外や意外、かなり親切に物的証拠もマーカム地方検事に示してくれています。いうほど嫌な奴じゃなくて、意外といい奴じゃん(笑)。
むしろ、物的証拠と心理的証拠のバランスが優れた作品だったのでは、と思いました。
それほど多くはない(少なくもないですけど)登場人物の間で、疑わしい容疑者がくるくると変わっていく様子もなかなかよくできていて、古い作品だからと恐れていたようには退屈しませんでした。
まあ、さすがにファイロ・ヴァンスの垂れる講釈(ペダントリー)は余計だなぁ、とは思いますが、全体として現代でも十分楽しめる記念碑的作品と感じました。
新訳シリーズの次の刊行、まさか3年後ではないですよね!?
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