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エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ [日本の作家 深水黎一郎]


エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社文庫)

エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社文庫)

  • 作者: 深水 黎一郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/05/13
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
エコール・ド・パリ――第二次大戦前のパリで、悲劇的な生涯を送った画家たち。彼らの絵に心を奪われ続けた有名画商が、密室で殺された。死の謎を解く鍵は、被害者の遺した美術書の中に潜んでいる!? 芸術とミステリを融合させ知的興奮を呼び起こす、メフィスト賞受賞作家の芸術ミステリシリーズ第一作。

「本格ミステリベスト10 2009」第9位。
「ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ !」 (講談社ノベルス)という結構強烈な作品(なんといっても、読者が犯人!)でメフィスト賞を受賞してデビューした深水黎一郎の第2作です。
第1作とはかなり肌触りが違う仕上がりですが、よくできたミステリを読んだなぁ、という満足感に浸れました。
作中作として被害者が書いたエコール・ド・パリの解説書「呪われた芸術家たち(レザルティスト・モウディ)」が節々に挿入されます。
芸術・美術は門外漢ですが、この解説書の部分、とても興味深く読みました。名前は知っていても、中身は知らなかったエコール・ド・パリ、なんだか楽しそうですね。エコール・ド・パリに属する芸術家が遺した作品を見るよりも、この解説書を読むほうが楽しめるのかも、なんて思うほどです。
単独でも楽しめるこの作中作が、全体の謎解きのヒントにもなっている、という素晴らしさ。
作中作が謎解きに絡むといえば、なんといっても泡坂妻夫の「11枚のとらんぷ」 (創元推理文庫)ですが、「11枚のとらんぷ」 ほどの派手さはないし、結びつきも穏やか(弱い?)だけれど、欠くことのできない構成要素としてぴたりと決まっています。
密室トリックも、前例のある、ある意味手垢のついたものなのですが、この作品の場合、これしかない、といいたくなるくらいの使い方がされていて、全体の仕掛けの中で非常にバランスがいい。
密室講義のような部分もあるし、読者への挑戦も挟まれるし、遊び心満載で、ミステリファンの心をくすぐる楽しい作品です。
探偵役で、海埜警部補の甥、神泉寺瞬一郎の設定も、芸術家の息子で、日本の大学へ行かず海外でふらふらして、日本にはろくに連絡もよこさなかったのに、ふらっと帰ってきた、というもので、いかにもなのがかえって好もしい。
芸術探偵シリーズとして、このあと
「トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ」 (講談社文庫)
「花窗玻璃 シャガールの黙示」 (講談社ノベルス)
「ジークフリートの剣」 (講談社)
と続いているようです。
とても楽しみにしながら、読んでいきたいです。

<おまけ1>
P123に「ハンガリアン・グァーシュ」という単語が出てきます。ハンガリー風ビーフシチューと説明してあります。それそのものは食べたこともあって何だかはわかるのですが、「グァーシュ」という表記が気になりました。グァムとかグァバとか書くことはあるものの、あんまり見ない書き方ですよね。

<おまけ2>
P245に、外国為替取引の話が出てきて、「平均移動線」という語がつかわれるのですが、これ、普通は移動平均線、だと思うのですが...



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