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三幕の殺意 [日本の作家 な行]


三幕の殺意 (創元推理文庫)

三幕の殺意 (創元推理文庫)

  • 作者: 中町 信
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/05/30
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
昭和四十年十二月初旬。名峰、燧ヶ岳が目の前にそびえる尾瀬沼の湖畔に建つ、朝日小屋。その冬はじめての雪が降り積もる夜、離れに住む日田原聖太が頭を殴打され、殺された。山小屋には被害者に殺意を抱く複数の男女が宿泊していた。容疑者の一人でもある、刑事の津村武彦を中心に、お互いのアリバイを検証してゆくが……。叙述トリックの名手として独自の世界を築いた著者の遺作。

前回の「エージェント6 (シックス)」〈上〉 〈下〉 (新潮文庫)までが5月に読んだ本の感想で、いよいよ今月の本になりました! 

中町信は近年旧作を改稿して創元推理文庫に相次いで収録され、今、書店にいくと平積みされていたりしますね。
「模倣の殺意」 (創元推理文庫) 旧題「新人賞殺人事件」
「天啓の殺意」 (創元推理文庫) 旧題「散歩する死者」
「空白の殺意」 (創元推理文庫) 旧題「高校野球殺人事件」
の3作です。
どんでん返しの名手として広く知られて読まれるのはとってもよいことですね。
いずれの3冊も旧版で読んでいますが、改稿されてらしいいるので、改めて読んでみるかな? と思っていました。
その前に、この新作「三幕の殺意」 を読んでおこう、とそう考えたのです。
この作品も昭和43年に発表された中編「湖畔に死す」を長編化したもの、ということで全くのオリジナル長編ではないようですが、久しぶりの中町信作品ということで楽しみでした。
ずいぶん昔に読んだきりなので、記憶も定かではないものの、「三幕の殺意」 は他の「~の殺意」三作とは趣が違うようです。
いわゆる「吹雪の山荘」を舞台にした殺人事件で、被害者が誰からも殺意を抱かれるような嫌な奴、というきわめてミステリらしい設定です。
もともとが昭和43年の作品だからでしょう、きわめて古めかしい作品のように思われました。舞台が昭和40年だからということではなく、展開や筆運びからそう思いました。
読者への挑戦も挿入されていて、その使い方もすこしひねってあるところ、中町信の面目躍如、という感じでしょうか。
ただ、肝心のミステリの骨格部分が、やはり古めかしく、今読むと苦しい感じがしてなりません。お得意の叙述トリック、吹雪の山荘の扱い方、アリバイトリックの使い方、いずれもストレートではなく、ひねりを効かせてあるのですが、全体として一昔前、というか、なんだか時代を感じました。
あと気になったのは、ラスト。
あとがきでも、
「本編は、最後の三行に、ちょっとしたひねりを加えてあるのだ。読者がこの三行をどう受け取り、どう評価してくれるのか、いささか気がかりではある」
と触れられていまして、「気がかり」とはいいながら、作者自信の仕掛け、なのだと思いますが、読者の想定の範囲内に収まっているようで、あまり意外感はないのではないでしょうか。
ということで、期待していたレベルと比較すると厳しく言ってしまいますが、あちらこちらに仕掛けられているひねりは楽しめました。
それにしても、この作品が、遺作になってしまったのですね。残念。
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