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航路 [海外の作家 あ行]


航路〈上〉 (ヴィレッジブックス)航路〈下〉 (ヴィレッジブックス)航路〈下〉 (ヴィレッジブックス)
  • 作者: コニー ウィリス
  • 出版社/メーカー: ソニーマガジンズ
  • 発売日: 2004/12
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
認知心理学者のジョアンナは、デンヴァーの大病院にオフィスを持ち、朝はER、午後は小児科と、臨死体験者の聞き取り調査に奔走する日々。目的は、NDE(臨死体験)の原因と働きを科学的に解明すること。一方、神経内科医のリチャードは、被験者の脳に臨死体験そっくりの幻覚を誘発する薬物を発見し、擬似NDEを人為的に引き起こしてNDE中の脳の状態を記録するプロジェクトを立ち上げ、彼女に協力を求める。だが、実験にはトラブルが続出し、やがて被験者が不足する事態に。こうなったら自分でやるしかない。ジョアンナはみずから死を体験しようと決意するが…… <上巻>
危機に瀕した研究プロジェクトを救うため、みずから<死後の世界>を垣間見ようと決意したジョアンナ。だが、彼女がNDE(臨死体験)の暗いトンネルを抜けて赴いた先は、思いがけない現実の場所だった。私はこの場所を知っている。でも、どこだったか思い出せない 。ただの幻影だから当然だと言うリチャードに反発し、ジョアンナはその場所がどこなのか、記憶の糸をたどって必死に調べはじめる。とうとう突き止めた答えは、まったく予想もしないものだった……
圧倒的なストーリーテリングで描く感動巨編! <下巻>

2002年10月にソニーマガジンズから出版され、2004年12月にヴィレッジブックスで文庫化されました。
今回読んだのは、この文庫版です。
昨日の「死体をどうぞ」 (創元推理文庫) (ブログへのリンクはこちら)もそうでしたが、積読期間が長すぎて、先々月ハヤカワ文庫SFに収録されました。

航路(上) (ハヤカワ文庫SF)航路(下) (ハヤカワ文庫SF)航路(下) (ハヤカワ文庫SF)
  • 作者: コニー・ウィリス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/08/27
  • メディア: 文庫


ハヤカワ文庫版は、すごーくポップな表紙でかわいいですね。
でも、これSFかなぁ? 「被験者の脳に臨死体験そっくりの幻覚を誘発する薬物」というのを除けばSF的要素はあんまりないような。

扱っている題材が、臨死体験。
臨死体験は、死後の世界を垣間見るものだ、という立場と、死の直前に脳が見せる幻覚だ、という立場。
もちろん(?) 視点人物のジョアンナは、死後の世界なんて信じていませんが、一方で幻覚と決めつけてもおらず、きちんと究明しようとしていて好感が持て、入り込みやすい設定でした。
前半、非常にゆったりと物語は進んでいきまして、個人的には、ユーモラスなシーンがあちこちにちりばめられていて、ちっとも退屈しませんでしたが、もどかしく感じる人もいるんじゃないかと思うくらい。
ところが一転、後半は怒涛の展開、というか怒涛の伏線回収。
上巻の巻末に収録されている「日本版に寄せて」で作者が明かしている、ジョアンナの臨死体験の舞台がはっきりしてからは特にその傾向が顕著です。
そして、下巻の280ページになって衝撃の展開。307ページから第三部が始まるその直前に、コニー・ウィルス、なんてことするんだ!!
そして第三部では、さまざまな登場人物たちが、大団円へ向けて集結(?) します。
被験者たち(第二次世界大戦の話をしてうんざりさせるミスター・ウォジャコフスキーなど)も、敵役(死後の世界を信じるマンドレイク)も、そして愛すべき心臓病患者で大災害(ヒンデンブルグ号とか、ポンペイの噴火とか、タイタニック号とか)好きの少女メイジーも(メイジーのキャラクターがとても印象的です)。

作者は、臨死体験について一つのアイデアを提示しているのですが、非常に説得力があるというか、納得感あるもので、なるほどなぁ、と感心できました。

ジャンル(SFかどうか)はともかく、とびきりのエンターテイメントです。
長さに見合うだけの、充実した読書体験を約束してくれます。ぜひ、ぜひ。

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