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大統領の執事の涙 [映画]

大統領の執事の涙 T0013250p.jpg

続けて映画です。
映画のHP(リンクはこちら)からあらすじを引用します。

黒人差別が日常で行われていた時代のアメリカ南部。
幼いセシル・ゲインズは、両親と綿花畑で小作農として働いていた。
しかし、ある事件で親を失い、ハウス・ニガー(家働きの下男)として雇われる事に。
「ひとりで生きていく」
努力の末、見習いから高級ホテルのボーイになった青年は、
その仕事ぶりが認められ、遂にはホワイトハウスの執事となる。

キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争……
アメリカが大きく揺れ動いていた時代。
気づけば、歴史が動く瞬間を最前線で見続けることとなったセシル。

ホワイトハウスの執事として求められるもの、それはその空間の“空気になる”事。
国を揺るがす重要な会議に立ち会えば、存在を消して仕事をこなし、
黒人として大統領から質問をされれば、「求められる回答」で答え、
いつでも忠実に働き続ける。
心の中には黒人としての、そして身につけた執事としての“誇り”を持ちながら。
その姿が歴代大統領や共に働く仲間の信頼を勝ち取り、
さらには世間の【黒人への意識】を変えるきっかけともなっていく。

「世の中をよくするために、父さんは白人に仕えている」

彼の仕事に理解を示しながら、寂しさを募らせる妻。
父の仕事を恥じ、国と戦うため、反政府運動に身を投じる長男。
その兄とは反対に、国のために戦う事を選び、ベトナムへ志願する次男。
大統領の執事でありながらも、夫であり父であったセシルは、
家族と共にその歴史に翻弄されていく。

激動の時代の中、彼が世界の中心・ホワイトハウスで見たものとは?
そして人生の最後に流した、涙の理由とは―。


いい映画だったなあ、と思います。
あえて不満を指摘しておきますと、アイゼンハワーからレーガンまで7人もの大統領に仕えた名執事、ということなのですが、実際の執事の仕事ぶりを通してもそれほど優れた執事だったのかどうか、それを明示するエピソードがないのが残念でした。
ホワイトハウスの執事には、空気になることが求められる。だから、「さりげない」よりもいっそう透明感のある行動でなければならない、ということは理解するにしても、それを裏打ちするエピソードがほしい。空気のような存在になっていることは、さすがは名優フォレスト・ウィテカー(Forest Whitaker)だけに十分伝わってくるのですが、それだけでは、たとえばレーガン大統領から「最高の執事」と言われるだけの凄味はわからないのです。ウィテカー演じるセシル・ゲインズの同僚たちだって立派な「空気」なのですから。

さて、この点を置いておくと、繰り返しますが、いい映画だったと思います。
白人用と有色人種用にいろいろなものが分かれていた南部を抜け出し、ホワイトハウスの執事にまでなるセシルの立身出世(?) の道程が、アメリカにおける奴隷解放、黒人の権利獲得の過程と、ときに重なり、ときに離反し、太い流れとなっているのがステキです。
フリーダムバス運動、ブラックパンサー党、キング牧師、ベトナム戦争...アメリカの公民権運動をおさらいできます。
そしてそこに、黒人解放運動に身を投じるセシルの長男ルイスが絡み、家族の物語、父と息子の物語にもなっています。ホワイトハウスもさることながら、セシルの家庭、ゲインズ家もメインの舞台なのです。

黒人の執事は、白人に仕える執事であることで、黒人の地位向上、権利獲得に貢献していた、という解釈もできるわけですが、そのヒントは作中キング牧師がルイスに語るせりふにはっきりと表れています。そしてセシルは、ほかならぬホワイトハウスの執事で、最高権力者に仕えていたわけですから、その威力はいかほどか。

ホワイトハウスの主を演じる俳優たちが、なかなかの見ものです。
アイゼンハワー = ロビン・ウィリアムズ
ケネディ = ジェームズ・マースデン
ジョンソン = リーヴ・シュレイバー
ニクソン = ジョン・キューザック
レーガン = アラン・リックマン
なかなかの役者ぞろいではないですか。
本物に似せようと、ほとんどコスプレ(?) みたいになっていて楽しい。アラン・リックマンを観るだけでもこの映画価値ありますよ(笑)。

P.S.
原題は The Butler。
大統領も、涙もなく、「執事」です。
日本語タイトルは、お涙頂戴的匂いがぷんぷんして、少々下品ですね。
それに、「空気」たらんとし、感情を殺し、当然涙も見せないことこそ、執事の矜持のはずなので、セシルにとっても迷惑な邦題では? なんて考えてしまいました。
誇らしげに、黒人大統領になったオバマに会いにホワイトハウスを再訪するんですよ!
感動はできますが、お涙頂戴ではありません。


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