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見えざる網 [日本の作家 あ行]


見えざる網 (単行本)

見えざる網 (単行本)

  • 作者: 伊兼 源太郎
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/10/01
  • メディア: 単行本


<帯裏表紙側あらすじ>
テレビの街頭インタビューで、インターネット上の希薄な繋がりに異論を呈した今光。
放送直後、混雑した駅のホームから、何者かにおされて落ちかけた。 昼には車にも轢かれそうになり、植木鉢が鼻先に落ちてきた。その夜、中学時代の友人で警察官となった千春と七年ぶりに再会。 行く先々で危険な目に遭うのは偶然ではないと千春が断言、 彼らを尾行してきた少年は気をつけた方がいいと忠告するが・・・・。 新宿駅で起きた群衆雪崩事故、個人情報漏洩と迫る危険。 得体の知れない悪意にどう立ち向かうか?
圧倒的リーダビリティで日本の闇をあぶりだす!


単行本です。
第33回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
巻末に選評がついているのですが、綾辻行人、北村薫、馳星周、坂東眞砂子が口をそろえて、前半はおもしろいけれど、後半はいただけない、と言っているのが目につきます。
そして、ぼくの読後感もまったく同じです。
前半のアイデア(ネット社会を舞台にしたもの)は、前例がないわけではないですが、この作品のように先鋭化させた扱いは始めて読みました。非常にサスペンスフルで、いいですね。
ところが後半、せっかくのアイデアを置き去りに(?)、ちまちまとした、昔ながらの因縁話の世界に入り込んでしまいます。惜しい。
前半を貫くアイデアには、ちょっと後半の舞台は窮屈ですね。
「横溝正史」の名を冠した賞なので謎解きミステリっぽくしなければ、と考えたのかも知れませんが、犯人探しなどせずに、前半の勢いを加速して、いっそホラーのような展開に持ち込んだ方がよかったのかも。
というのも、アイデアを活かすということもあるのですが、この作品の主人公の家がお寺で、その家族のキャラクターがとてもおもしろいので、人物の魅力をもっと前面に出せばよいのに、と思ったりしたから。人物像がきちんと固まっていると、ホラーは一層怖くなりますし、向いていたのではないでしょうか?

というわけで、未消化な感じはありますが、新人賞作品としては十分楽しめましたし、作者の発想力にはやはり惹かれます。
受賞のことばで「消えたくない」とおっしゃっている作者のことですから、どんどん書き続けて優れたアイデアを送り出していってほしいです。


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