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パルテノン [日本の作家 柳広司]


パルテノン (実業之日本社文庫)

パルテノン (実業之日本社文庫)

  • 作者: 柳 広司
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2010/10/05
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
古代ギリシア黄金期をダイナミックに俯瞰!
ペルシア戦争で勝利をおさめ、民主制とパルテノン神殿の完成によって、アテナイが栄華を極めた紀元前五世紀。都市国家(ポリス)の未来に希望を託し、究極の美を追究した市民の情熱と欲望を活写する表題作「パルテノン」ほか、「巫女」「テミストクレス案」の三編を収録。『ジョーカー・ゲーム』でブレイク前夜に刊行、著者の「原点」として位置づけるべき意欲作、待望の文庫化!


副題に「アクロポリスを巡る三つの物語」とあります。
三編収録されていますが、長さにはだいぶ差があって、最後の「パルテノン」が全体の約三分の二を占めています。
長短問わず、いずれも面白く読みましたが、ミステリ味はきわめて希薄ですね。
たとえば「テミストクレス案」について、解説で宮部みゆきが--この解説もとても面白いです。作品の解説になっているか、というとやや疑問が残りますが、おもしろいです--、創元推理短編賞の応募作だったことを明かしていて、選考委員だった宮部みゆきは「小説としては、候補作のなかでいちばん面白い」と褒めていたのに、そのときは受賞作なしという結果で落選だった、という (しかもその事実を宮部みゆきは忘れていて、後日柳広司自身から指摘される) エピソードを披露していますが、うーん、おもしろいけれど、「創元推理短編賞」としてはミステリ味が薄すぎて推しきれなかったんじゃないでしょうか?
その他の作品も、諜報戦だったり (神託を告げる巫女が、今でいう情報戦を仕掛けている!、という話)、ギリシャ世界を舞台にした法廷劇だったりするので、ミステリには近しいところを描いていますし、逆転劇とか発想の転換もみられるのでミステリの要素は盛り込まれていますが、印象としてミステリという感じはあまりしませんでした。

それでも、じゅうぶんおもしろい。古代ギリシャなんて、ひたすら縁遠い世界が、なんだか身近です。
パルテノン神殿も、大英博物館で<エルギン・マーブル>なんかを見たものですが、当時の姿に思いを馳せることなどなく過ごしてきましたが、この「パルテノン」を読んで想像をめぐらせてしまいました。
アテネに観光に行く前に、この本を読めればよかった--出版されてなかったので、無理ですけれどね。
いわく「空へ向かおうとしている神殿」。いわく「重い大理石で造られていながら、“重さ”を少しも感じさせない軽やかな神殿建築」。
ああ、みてみたかったなぁ。

というわけで、残念ながら(?) ミステリ味は薄いけれど、じゅうぶん堪能しました。



タグ:柳広司
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