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真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ [日本の作家 あ行]


真夜中のパン屋さん (ポプラ文庫)

真夜中のパン屋さん (ポプラ文庫)

  • 作者: 大沼 紀子
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2011/06/03
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
都会の片隅に真夜中にだけ開く不思議なパン屋さんがあった。オーナーの暮林、パン職人の弘基、居候女子高生の希実は、可愛いお客様による焼きたてパン万引事件に端を発した、失綜騒動へと巻き込まれていく…。期待の新鋭が描く、ほろ苦さと甘酸っぱさに心が満ちる物語。


滝沢秀明主演でドラマ化された「真夜中のパン屋さん」 シリーズの第1作です。
この本を買ったきっかけは、年末恒例の週刊文春のミステリー・ベスト10です。
このブログの感想にも書いたのですが(リンクはこちら)、昨年末のミステリー・ベスト10に「2013文庫ミステリーベストセラーランキング」というコーナーがあって、このシリーズの「真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生」 (ポプラ文庫)が第8位に入っていたんです。
本屋さんでは平積みになっていますし、ドラマ化もされましたし、話題作なんだと認識はしていても、こちらのフィールドの作品ではないなぁ、とスルーしていたのです。なのに、ミステリーベストセラーにリストアップされている! うーん、ミステリだったのか!?
シリーズものは、やはり第1作から順に読みたいよね~、と本屋さんでこの「真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ」を手に取ってあらすじを確認してみると、うーん、ミステリっぽいといえばミステリっぽいかな? というわけで、購入。
読んでみた結論は....ミステリではありませんね、これ。
謎やちょっとした逆転があっても、このレベルのものをミステリの範疇に入れる必要性は、ミステリのサイドからも、この作品のサイドからもないと思います。この作品にミステリとレッテルを貼る必要性を感じません。ミステリでなくても、十分おもしろかったですよ
シリーズの巻を重ねるごとにミステリっぽくなっていくのでしょうか?

母親に育児放棄(?)されてしまった希美が、カッコウの托卵になぞらえられたあと、家族・家庭 (ひいては学校) を「巣」とたとえるあたりから、お、これはいいかも、とちょっと気合を入れて読みました。
個性的な登場人物たち(ちょっとやり過ぎ?)が繰り広げるストーリーが楽しめます。
こんなに問題を抱えたひとばっかり集まるかなぁ? と思うところはありますが、真夜中しか空いていないパン屋さん「ブランジェリークレバヤシ」自体がファンタジックなので、これはこれでOKなんだと思います。
希美に加えて、これまた育児放棄されたみたいな小学生こだま、覗き魔である脚本家斑目、店も家も失ったニューハーフのソフィア...これに、「ブランジェリークレバヤシ」オーナーの暮林、パン職人の弘基のエピソードと、積み重なっていくことで、お馴染みになり、お馴染みになったと思ったら少し印象が変わり...このあたりのキャラクターがいいですね。
それぞれが抱えた問題が、安直に解決されてしまうのではなく、問題は問題として残っても、家族というか人と人のつながりがきちんと浮かび上がってくる、ハートウォーミングな手触りが最大の特長だと思いました。


<おまけ1>
冒頭、このパン屋さん「ブランジェリークレバヤシ」の営業時間は、「午後二十三時から午前二十九時」と書いてあります。変な表現ですね。午前0時を超えた時間を二十五時、二十六時……というのはまあ有りだとしても、二十四時間制で時間をいうときは、午前も午後もないはず。「二十三時から二十九時」あるいは「午後十一時から午前五時まで」と書くべきでしょう。

また、140ページに
「自分が横柄なことを言っているとは、微塵も思っていない様子で」
というところがあるのですが、これ「横柄」でしょうか? とちょっとびっくりしました。
大辞林だと「人を見下したようなえらそうな態度をとるさま。」
甘えたような鼻声で、無茶なお願いごとをしているシーンなんですが、横柄、というのとはちょっと(ずいぶん?)違いますよね? 本が手元にない方にはなんのことだか、と思われるでしょうが...

ライトな作品とはいえ、言葉を媒体にしている以上、もっと気を使って書いてほしいと思うので、記録しておきます。


<おまけ2>
229ページに「夢違観音」が出てきます。明記されていませんが、場所からして世田谷観音のことだと思われます。これは、法隆寺の夢違観音を模したものらしいです。
で、これの音(発音)が「ゆめちがいかんのん」と書かれていてびっくり。「ゆめたがいかんのん」と思っていたからです。
世田谷観音のHPでは、「ゆめちがいかんのん」と書かれていますので、こちらが正しいのですね。
法隆寺のは「ゆめたがい」だったと思うけどなぁと思いつつ、「夢違観音」自体は調べてみると、どちらの読み方もありなんですね...勉強になりました。


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