猫色ケミストリー [日本の作家 喜多喜久]
<裏表紙あらすじ>
落雷によって、計算科学専攻の大学院生の明斗と、構内に棲みつく野良猫、女子院生スバルの魂が入れ替わってしまった。しかも明斗はスバルに、スバルは猫に意識が入りこんでいる。明斗の肉体は昏睡状態。元にもどるため奔走する一人と一匹は、猫の餌から研究室で違法薬物の合成事件に気づく。餌に薬物を混入した犯人の目的とは?『このミス』大賞作家による、大人気の化学ミステリー!
「ラブ・ケミストリー」 (宝島社文庫) (感想のページへのリンクはこちら)でこのミステリーがすごい! 大賞を受賞した喜多喜久の第2作です。
今回も舞台は大学。またもや有機化学を題材としています。
前作が取り扱っていたのは全合成。今回は不斉反応ができる触媒探し。有機化学とあまり縁のなかった主人公明斗の目を通すので、素人にもわかりやすくなっています--というのは嘘ですね。ちょっと見栄を張りました。正直なんのことかわからないです。だけど、やっぱり今回も楽しそう、研究室は。
今回死神は登場しませんが、人の入れ替えが起こります。いや、それどころか、猫も巻き込んだ入れ替わり。
もっとも猫の意識が入り込んだ明斗は昏睡状態ということで動き回りませんので、明斗の意識を乗せたスバルと、スバルの意識を乗せた猫がメインとなります。
男女の入れ替わり、という事項があっさり処理されているのも、実はポイント高いんじゃないでしょうか。
猫の取扱い、結構難しいだろうなぁ、と思って、読んでいてうまくいくかどうか、ちょっとドキドキ、ハラハラできました。ですが、そのへん研究室だったらうまくいくのかも、なんて思ってしまいました。
今回は前作よりも、軽めは軽めなんですが、ミステリ度が大幅アップ。(書きようによっては、重苦しい仕上がりにすることも可能に思いました)
入れ替わった意識をどうやってもとに戻すか、ということが、事件の謎解きとリンクする構成も、なかなかよく考えられているなぁ、と感心しました。
偶然入れ替わって、偶然元に戻る、というのでもよいのですが、何かひねりが加えられていると楽しく感じますよね。
あらすじはかなり先の方まで明かしてしまっていますが、書いちゃっているので触れておくと、違法薬物の合成事件、というのが舞台に非常にふさわしくて、ここにも感心。
喜多喜久、お気に入りに指定しておこうと思いました。
わりとハイテンポで文庫で出ているようですので、フォローしていきたいと思います。
(積読本が多すぎて、ゆっくりペースになっていまいますが)
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