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十三回忌 [日本の作家 か行]


十三回忌 (双葉文庫)

十三回忌 (双葉文庫)

  • 作者: 小島 正樹
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2013/07/11
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
自殺とされた資産家夫人の不審死。彼女に呼び寄せられるかのごとく、法要のたびに少女が殺される。一周忌には生きながら串刺しにされ、三回忌には首を持ち去られ、七回忌には唇を切り取られていた。そして迎えた十三回忌、厳戒態勢の中、またもや事件が起きた――。巧みな謎と鮮やかな結末に驚愕必至の長編ミステリー。

裏表紙側の帯に「やりすぎミステリー」なんて言葉も出てきますが、まさにやり過ぎ感たっぷりのミステリーです。
静岡県(岡山県じゃないんだ、惜しい!)の傲慢な資産家。
本館、渓臨館、峡臨館、仮面館に温室、墓所まであるお屋敷。
離婚、再婚を重ねた結果愛憎入り交じる家族(というか、憎ばかり?)。
うーん、絵に描いたような本格探偵小説の舞台ですね。家系図も、家周辺の地図まで掲げてあって、本格的。
周年忌ごとに殺されていく家族。しかも、殺され方がすごいですよ。串刺し、首切り、唇だけ切り取られる猟奇的な殺人....加えて、七月に雪が降った、とか死者の声が聞こえてくる、とか。
犯人らしい人物の独白も、プロローグから始まって、各章の間に幕間として挟まれる。
警察が無能なのも、典型的。
時代遅れといえば時代遅れなんでしょうが、これが魅力といえば魅力なのです。
むしろ、名探偵役の個性が弱いのがちょっと物足りないくらい。

途中、第二の殺人(=三回忌の殺人)のトリックがあっさりと明かされてしまうところが驚きですが、それゆえ、明かされないほかの殺人のトリックに興味が集中します。
この三回忌のトリックが、まるで島田荘司の作品を読んでいるかのようなタイプのもので、そのトリック自体もうれしい驚き。こういう豪胆なトリック、思いつく人あんまりいませんもんね。

それでいてハウダニットに特化しているかというとそうでもなく、犯人の独白が折々挿入されていることからもお分かりかと思いますが、ちゃんとフーダニットもしています。
こちらはラストで、独白と矛盾するようなところがあって「あれっ?」と思ったのですが、読み返してみると注意深く書かれていますね。ぎりぎりセーフではないでしょうか。

トリックに話を戻すと、第一の殺人のトリック(?) は、豪胆を通り越して、もう、無茶苦茶です。この無茶苦茶は、いつもと違って誉め言葉とは言い切れません(笑)。個人的には感心しましたが。
いくらなんでも、これはないでしょうね。昭和四十九年という時代背景を前提にしても、痕跡が残って(いくら台風の雨と言ってもすべてを完全に洗い流すことはないでしょう)、事態の究明まではいかなくとも、もっと解明が進んだように思います。
ただ、想像すると、かなり残酷ですが絵になるというか、妙に視覚に訴える仕掛けで迫力があります。
第二の殺人のトリックは早めに明かされてしまうと言いましたが、首の切断方法は後で示されて、これがまた、すごい。こんな恐ろしいこと、よく思いついたものです。ロープが出てきたのには、一人で拍手喝采してしまいましたが。
第三の殺人のトリックはオーソドックスなものですが、やはり唇を切った理由がすごいですよね。
第四の殺人のトリックは、割とミステリでは普遍的なトリックを組み合わせたものなのですが、これまた無理、でしょうね。あり得るかも、とは思いますが、少なくとも成功しない確率の方が高そうです。
あと、周年忌ごとに殺人が起こる理由が、ちゃんと説明されていなかったような...

とまあ、あれこれあげつらってしまいましたが、こうやっていろいろとコメントしたくなるほど印象的で、魅力がある、ということでもあります。
この過剰さは癖になりそう。
「扼殺のロンド」 (双葉文庫)も買ってあるので楽しみです。



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