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最後の証人 [日本の作家 や行]


最後の証人 (宝島社文庫)

最後の証人 (宝島社文庫)

  • 作者: 柚月 裕子
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2011/06/04
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
元検察官の佐方貞人は刑事事件専門の敏腕弁護士。犯罪の背後にある動機を重視し、罪をまっとうに裁かせることが、彼の弁護スタンスだ。そんな彼の許に舞い込んだのは、状況証拠、物的証拠とも被告人有罪を示す殺人事件の弁護だった。果たして佐方は、無実を主張する依頼人を救えるのか。感動を呼ぶ圧倒的人間ドラマとトリッキーなミステリー的興趣が、見事に融合した傑作法廷サスペンス。


作者柚月裕子は、「臨床真理」 (上)   (下) (宝島社文庫)で第7回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞しデビューした作家です。
「臨床真理」 (上)   (下) には正直あまり感心しなかったのですが、この「最後の証人」 は評判がいいので手に取りました。
面白く、楽しく読みました。
でも、傑作とは呼べないな、というのが正直なところ。

元優秀な検察官ながら正義感から辞め、今は弁護士の佐方。
塾帰りの息子を交通事故で亡くしたが、加害者が罪から逃れたことから加害者への復讐を企図する高瀬夫妻。
見事なまでに、手垢のついた題材、人物像です。何回もこういう設定読んだことありますよね。
それを法廷ミステリの形で提示して見せ、かつ、過去を振り返るカットバークシーンをちりばめる。
冒頭プロローグが事件のシーンで、すぐに法廷シーン、回想シーンと続きます。
ちょっとした趣向を作者は盛り込んでいますが、それほど効果的なものでもないので、後半であっさりと読者に明かしてしまったところは、なかなかやるな、と思いました。
そのあと、過去の交通事故の真相、そして現在の事件に切り込んでいくところは鮮やかです。このあたりの構成はいい感じです。

でも。面白かったんなら、文句言うな、というところではありますが...
その真相がちょっと見え見え。親子愛とか夫婦愛とか、警察・司法システムへの批判とか、容易に見当がつきすぎて、もうちょっとひねってもらいたい。
法廷ミステリとして着地させるためにあらわれる「最後の証人」も、作者が意図したほどには盛り上がらない人物です。
弁護士佐方もパターン通り。
佐方をヒーローに仕立てるために、相手役の検事は不備が目立つし、法廷の進行もちょっと現実離れ。リアルな感じで警察・司法システムへの批判を盛り込むなら、法廷シーンは現実に即しておかないと (あまり取材されていないんでしょうか?)。

と粗は目立つのですが、面白かったんです。
新鮮味のない題材の組み合わせであっても、十分楽しめる作品に仕上がっています。組み合わせ方がよいということなのでしょう。
ドラマにすると、かなり面白くなるんじゃないでしょうか。
続けて読んでいきたい作家です。




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