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大富豪同心 八巻卯之吉放蕩記 [日本の作家 は行]


大富豪同心 八巻卯之吉放蕩記 (双葉文庫)

大富豪同心 八巻卯之吉放蕩記 (双葉文庫)

  • 作者: 幡大介
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2010/01/07
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
老中も一目おく江戸一番の札差・三国屋の卯之吉が、同心株を買って定町廻同心見習いになった。武術の心得は全くないが、放蕩三昧を繰り返していたときに得た知識、人脈、そして莫大な財力で難事件を、次から次と解決していく。卯之吉の出自を知らない同心仲間は、その八面六臂の活躍にただただあきれるばかり。書き下ろし長編時代小説第一弾!


「猫間地獄のわらべ歌」 (講談社文庫)
「股旅探偵 上州呪い村」 (講談社文庫)
の2作でミステリファンを楽しませてくれた幡大介の時代小説です。
「猫間地獄のわらべ歌」「股旅探偵 上州呪い村」がおもしろかったので、その他の作品も読んでみようと思いました。
ところが、幡大介って、ものすごい多作家なんですね。
「天下御免の信十郎」シリーズ (二見時代小説文庫)
「独活の丙内密命録」シリーズ (竹書房時代小説文庫)
「大江戸三男事件帖」シリーズ (二見時代小説文庫)
「千両役者捕物帖」シリーズ (時代小説文庫)
「関八州御用狩り」シリーズ (ベスト時代文庫)
パッと見ただけでもこんなに。本当はもっとあると思います。
シリーズものがいっぱいあって、さてどれを読んだものやら。
で、筒井康隆の「富豪刑事」 (新潮文庫)を連想させてくれたこの「大富豪同心」 (双葉文庫)を手に取ることにしました。
結論から申し上げると、大変おもしろかったです。

どう考えても同心として活躍できそうもないキャラクターなのに、そして本人はたいしたことをしないのに、周りが勝手に動いたり、勝手に勘違いしたりして、剣豪で腕利きだと思われてしまう。
定番と言えば定番の設定ですが、実に気持ち良く、卯之吉をめぐる虚実の落差が心地よい。
放蕩仲間にキーマンがいるところとか、定石の展開が、かえってそうでなくちゃと思わせてくれます。

冒頭、突然同心となった卯之吉は、「江戸時代の武家社会では、自分がお役に就いたりした際に、上役や同輩を招いて自分自身の披露宴を開催する、というしきたりがあった。全額自腹で同僚たちを持てなし、みやげ物まで持たせるのだ。」とかで、宴を持つのですが、その場所が江戸屈指の料亭「叙風庵」で(「叙風庵は幕閣や大名家も贔屓にしている料亭」で、扶持米三十俵の不浄役人が足を踏み入れて良い場所ではないし、うっかり踏み込んだら無礼討ちにもされかねない、ような気もする」なんて説明があります)、酌をする芸者が、「目下のところ人気番付第一位を飾る売れっ子」で「深川芸者上位番付の貸し切り状態」。しかもその宴席に老中がやってきて卯之吉に杯をとらせ、「皆の者に申し渡す。八巻の面倒をよく見てやれ」と命じる。
いやあ、凄まじい。そりゃあ、周りも度胆抜かれますよね。

時代考証の正確さは、時代小説を読み慣れないのでわからないのですが、書き込み方からちゃんと書かれているように思われます。
軽く読めますが、登場人物のキャラクターもマンガっぽいですが際立っていますし、いいもの読んだな、と感じました。
しかし、シリーズもかなり巻数を重ねているので、今から追いかけるのは勇気がいるなぁ...



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