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エデン [日本の作家 近藤史恵]


エデン (新潮文庫)

エデン (新潮文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/12/24
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
あれから三年――。白石誓は唯一の日本人選手として世界最高峰の舞台、ツール・ド・フランスに挑む。しかし、スポンサー獲得を巡る駆け引きで監督と対立。競合チームの若きエースにまつわる黒い噂に動揺を隠せない。そして、友情が新たな惨劇を招く……。目指すゴールは「楽園」なのか?  前作『サクリファイス』を上回る興奮と感動、熱い想いが疾走する3000kmの人間ドラマ!


「サクリファイス」 (新潮文庫)(感想のページへのリンクはこちら)の続編で、舞台はいよいよ(?) ツール・ド・フランス。
上で引用した書影ではきちんとわからないかもしれませんが、凱旋門を背景にしたレース風景の写真が使われています。
白石誓(しらいしちかう)が主人公をつとめます。
まず、前作に引き続き、ロードレース素人にもわかりやすく競技内容が描かれていきます。
このシリーズには、ミステリとしての側面、スポーツものの側面、そして誓の成長物語としての側面があります。
誓のスタンスが、きわめて日本人らしいというか、いくら日本人でも外へ出て勝負している人はもうすこし自分を強く打ち出すんじゃないかな、と思わないでもないですが、その分、こちらからはわかりやすく、ツール・ド・フランスもなんだか身近に感じることができました。
そんななか、プロ集団としてのスポーツへのかかわり方が出てきて、チーム内のごたごたや対立が盛り込まれます。
プロなので、スポンサーがつかないと終り、契約が延長されなければ終り。
「サクリファイス」の苛烈さは影を潜めていますが、それでもロードレースにかかわる人物が抱える闇は大きなもののように見受けられました。
それでも、晴れの舞台で勝負を賭けることの素晴らしさ。
作中ラスト近くで、「呪い」という単語も出てきますが、同時に、タイトルにもある通り「楽園」でもあります。
いわく、
「ここは、この世でいちばん過酷な楽園だ。過酷なことはわかっているのに、自転車選手たちは楽園を目指し続ける」(308ページ)
ミステリ的には、大きな仕掛けがあるわけではありませんが、ネガとポジの反転のように、くるっとひっくり返して見せる手際は鮮やかだったように思います。たとえそれが読者の想定の範囲内であったとしても、それがエデン(楽園)を目指すものの光と影でもあることに、作者のまなざしを感じます。

このあとの、「サヴァイヴ」 (新潮文庫)も読むのが楽しみです。




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