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群衆リドル Yの悲劇’93 [日本の作家 は行]


群衆リドル Yの悲劇’93 (光文社文庫)

群衆リドル Yの悲劇’93 (光文社文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/08/07
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
浪人生の渡辺夕佳の元に届いた、壮麗な西洋館への招待状。恋人で天才ピアニストの、イエ先輩こと八重洲家康と訪れた『夢路邸』には、謎を秘めた招待客が集まっていた。そこに突如現れた能面の鬼女が、彼らの過去の罪を告発し、連続殺人の幕が切って落とされる。孤立した館に渦巻く恐怖と疑心。夕佳とイエ先輩は、『マイ・フェア・レイディ』の殺意に立ちむかうことができるか!?


古野まほろの作品を読むのは、「天帝のはしたなき果実」 (幻冬舎文庫)(感想のページへのリンクはこちら)に続いて2冊目です。
「天帝のはしたなき果実」 がかなり強烈だったので、天帝シリーズ以外だとどうかな、と思って手に取りました。
で、冒頭「夢路邸招待客等一覧」と題された登場人物リストを見て、うーん、と思いました。
東京帝国大学、勁草館高等学校...天帝シリーズと地続きなんだ...そうとわかっていたら、買っていなかったかも...

裏表紙側の帯が象徴的です。
「吹雪の山荘、死を告げるマザー・グース、密室の生首、ダイイング・メッセイジ、足痕のない殺人、ミッシング・リンク、読者への挑戦状、そして名探偵--
絢爛たる本格ミステリの饗宴!

目次で、プレリュード、アンコールに挟まれているのが、第1章、第2章ではなく、第一楽章、第二楽章...となっており、順に、鬼、瘴、點、抉。
起承転結、というわけですが、凝りすぎでしょう。
第三楽章 點の途中に第1の読者への挑戦状が、第三楽章のおわり、第四楽章の手前で第2の読者への挑戦状が挿入されています。
基本的には渡辺夕佳の一人称というかたちで、「天帝のはしたなき果実」 に比べると穏やかではありますが、それでもまだ読みにくいですね。

中身は、上で引用した帯にもある通り、ミステリのガジェットをこれでもかと詰め込んだ作品で、クリスティの「そして誰もいなくなった」を思わせる展開です。
それぞれの殺人が不可能犯罪というのはいいんですが、そのトリックが、あれ、ですか...
たしかに、あれ、は有名な古典(ネタバレになりますが、リンクを貼っておきました)へのオマージュとして使われているのでしょうが...
まあ、繰り返し使った点は、あっぱれ、というべきですか。
しかしなぁ、そんなにうまくいくかなぁ...

犯人は誰か、というのも、「そして誰もいなくなった」的展開をすると、どんどん登場人物が減って行ってしまうので、それほど難しい謎解きではありません。
ただ、それぞれの殺人に、それぞれ犯人特定の手がかりが忍ばせてあるという"こだわり"は注目。
また、おもしろいのは、
読者への挑戦状--2 に
「誰が四人を殺したのか---
 何故四人は殺されたか--
 四人を結ぶ共通点は何か--」
とあるように、被害者のミッシング・リンク(四人を結ぶ共通点)を推理でつきとめようという趣向です。
これ、新しい試みなんじゃないでしょうか? (試みの斬新さの割には読者に届きにくい趣向のような気もしますが)
ミステリではわりとよくある動機ですが、この趣向には似合っています。(現実には、こんな動機で殺されては嫌だと思う人が多いと思いますが)
あと、個人的には、ダイイング・メッセージが好みでした。ダイイング・メッセージなんて不自然だという意見に対して、開き直ってみせたかのような解決がいいですね。

ぎくしゃくしたところの多い作品で、有栖川有栖が解説で
「ロジカルな推理を駆使することで完成するパズルは、美しい一幅の絵画というよりは、一種グロテスクな風景だ」
と指摘しているようにグロテスク、ではありますが、なんとなく惹かれるものがあります。
読了2冊目にして、作者の術中に嵌ったのかもしれません。




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