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神のゆらぎ [映画]

神のゆらぎ T0021100p.jpg


過去と現在を行き交うサスペンス、と書いてある紹介文を見たんですよ。だから観ました。
でも、これ、サスペンス、ではないです。

映画のHPからストーリーを引用します。

時に人は、ただ奇跡が起きるのを待つしかない。
ともにエホバの証人である看護師と、末期の白血病を患うフィアンセ(グザヴィエ・ドラン)。老境にありながら情熱的な不倫を続ける、バーテンの男とクロークの女。互いへの失望を偽りながら暮らす、アル中の妻とギャンブル狂の夫。そして取り返しのつかない過ちを償うためドラッグの運び屋となるひとりの男……。複数のものがたりが現在と過去を往来しながら、終着点—墜落する運命にあるキューバ行きの機内へと向かう…。


グザヴィエ・ドランといえば、「トム・アット・ザ・ファーム」の人ですね。「わたしはロランス」とか「Mommy/マミー 」で高名な監督・俳優のようですが、そちらはあいにく観ていませんので...
「トム・アット・ザ・ファーム」も、サイコ・サスペンスというふれこみで観に行ったら、サイコ・サスペンスじゃなかったし、今度も「神のゆらぎ」も、サスペンスって思って観に行ったら、サスペンスじゃなかった...

上のあらすじを見ても、サスペンスじゃないってわかりますよね。

いつものシネマ・トゥデイからも引用します。

チェック:『Mommy/マミー』などで監督・俳優として注目を浴びるカナダのグザヴィエ・ドランが出演した、選択と運命をめぐる物語がサスペンスフルに展開するドラマ。ある宗教を信仰する看護師と同じく信者で白血病患者のカップル、不倫を続ける老いた男女などいくつものエピソードが紡がれ、一つの終着点に集約される。監督は、『7 DAYS リベンジ』などのダニエル・グルー。出演の決め手になったとグザヴィエが語る役どころに期待。

ストーリー:看護師と末期の白血病であるフィアンセのエティエンヌ(グザヴィエ・ドラン)は、共にエホバの証人を信仰していた。さらに不倫関係のバーテンダーの男とクロークで働く女、アルコールに溺れる妻とギャンブルが大好きな夫、過ちを償うためにドラッグの運び屋になる男らの運命が交錯していく。

こちらは、「サスペンスフルに展開する」と書かれていても、サスペンスっぽくはないですね。これを先に読んでいたら、観に行かなかったかも。

それにしても、グザヴィエ・ドランは、主役じゃないですよ......まず、そこにびっくり。
群像劇、的に処理されていますが、主役はグザヴィエ・ドランのフィアンセである看護師ジュリーですね。演じているのは、マリリン・キャストンゲという女優さん。

飛行機事故の生存者の治療にあたるジュリー。その婚約者エティエンヌは白血病だけれども、エホバの証人の信者だから輸血できない。

エホバの証人って、知らないんですが、大変そうですね。信仰に反することをすれば、信者の間で排斥されてしまうなんて。
輸血ができない、というのは知っていたのですが、自分が血をもらうのだけがだめなんだと思っていました。信者の身体に他人の血が入ってはいけないのだ、と。
でも、この映画を観ると違うことがわかりました。血を誰かに輸血するために差し出すこともだめなんですね。
「輸血」という行為そのものが禁忌なんですね。

このジュリーのパートと、飛行機事故に関連する人たちの群像劇、です。
だから、「現在と過去を往来」といったところで、混乱はしません。こちらがミステリ好きなもんで、なにか(叙述トリックのような)仕掛けでもあるのかな? と勘ぐりながら観ていましたが、そういうギミックはありません。少し拍子抜け。でも、これはこちらの観方が悪かったので、映画のせいではありません。
ほんの小さなきっかけで、その飛行機に乗り合わせたり、乗らなかったり...
「飛行機が落ちるのはすなわち全能の神がいないということ」というある登場人物のセリフがジュリーに響いてジュリーは決断をします。
たった一人の生存者が誰か、というのも別にトリッキーなわけでもありません。
淡々と、登場人物たちが惨劇へ進んでいくのを見、誰が助かったのかを知る、という感じです。
この淡々としたところが、この映画の特徴であり、ポイントなのだと思います。

Xavier Dolan's Commentとして映画のHP
グザヴィエ・ドランのコメントがあるので、引用しておきます。

私は映画監督ですが、意識としては「俳優業」が一義的です。ただ待っていてもやりたい役のオファーが来ないので自分で自分に役を与えるために監督になったのです。『神のゆらぎ』ではエホバの証人のカップルを演じていますが、いままで演じたことがない新しい役どころだったので、ぜひやってみたいと思いました。役者というものは常に新しい演技を探求する性分なんだと思います。特に今回の役では、宗教の制約から恋人にさえ輸血を拒み死ぬことをよしとするとても難しいキャラクターですが、彼には彼の考え方があって、それを頑なに信じている男なのだと思います。僕にはそんな彼が「とても愛おしい人間」と思えるのです。エホバの証人という宗教心については、とくに感じるものはありません。エホバはホモセクシャルを禁じている宗教ですが、この登場人物を卑下しているわけでもなく、ただ彼の皮膚と自分を同化させるだけだ、と捉えています。僕自身、幼い頃に厳格なカソリックの叔母に連れられて教会へ通っていた経験があることから、何かを強く信じる人間の心について理解がある方だと思います。ですから信仰心がある人間を演じるのは僕にとって難しいことではありません。人が何かを信じるということの意味は理解しているつもりです。

しかしなぁ、このグザヴィエ・ドランが演じたエティエンヌって役柄、新しい演技とか難しい演技とかを要求するような役柄に観えなかったんですが...素人が観てるからなんでしょうか...

ちなみに、原題のMIRACULUMというのは、ラテン語で奇跡だそうです。


原題:MIRACULUM
製作年:2012年
製作国:カナダ




<ネタバレ気味の追記>
ラストで、ジュリーがエホバの証人の信者仲間だった看護師から(ジュリーがしっかり排斥されていることがうかがわれるエピソードのすぐ後で)、
「彼は昨日死んだわよ」
と言われるのですが、この彼、ってエティエンヌでしょうか? それとも、助かったはずの飛行機事故の生存者でしょうか?
よくわからなくて、でも、どちらであってもかなり悲しい話だなぁ、と思いました。




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