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一角獣の繭 [日本の作家 篠田真由美]


一角獣の繭 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)

一角獣の繭 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/08/12
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
六月の緑の森の、白い花の咲く木の下で、ぼくは君と出会った。人の姿をした美しい一角獣(ユニコーン)と――。放火殺人事件の生き残りの少女に心惹かれていく蒼。しかし少女の母は、眼窩をイッカクの牙に貫かれて無残な死を遂げた! すべてが明らかにされたとき、桜井京介の下した決断とは!? 大人気シリーズ第13弾。


『最後の「燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)が文庫になる前に追い付いておきたいです。』
と前作「聖女の塔 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)の感想で書いたのですが(リンクはこちら)、今月、その「燔祭の丘」が文庫化されたので、だめでしたね。間に合いませんでした。

蒼の初恋!? とシリーズ的に大注目の巻なんですが、いやいや、それどころではなくて、ラストにはびっくり。
そういう風にこのシリーズ展開するんですね。
京介~

先走ってはいけませんね。
この「一角獣の繭」では、京介と対決する相手との闘いから逃れて(?)、長野県の山奥へ潜む蒼が恋に落ちます。
で、事件は、その蒼の相手である七座晶那の家族に起こった事件となります。回想の殺人、という枠組みになっていますが。
晶那の父とその愛人と祖母が殺された事件。晶那の母と晶那には、確たるアリバイがあった。
こういうストーリーの場合、ミステリーでは、生き残り的少年・少女が犯人であることが多いので(おいおい)、読者は晶那が犯人じゃないか、と疑いながら読み進めることとなるわけですが、作者は慎重に慎重に、晶那が犯人というのは無理があることを述べていきます。すると、まあ、ひねくれもののミステリファンは、一層晶那を疑うようになるのですが...
実際にどうだったかは読んでお確かめください、というところですが、447ページでさらっと明かされるトリック(?) にはニヤリとしてしまいました。
これ、怒る人いますよ、きっと。でも、いいんです。
クリスティのあれを思い出しました(ある意味ネタバレなので、伏せておきます。amazon にリンクを貼っていますので、確かめる方はどうぞ)。あれを初めて読んだときは、フェアじゃないなぁ、と子供心に少し怒りを覚えたことを思い出しましたが、「一角獣の繭」のこの部分を読んでも腹は立ちませんでした。大人になった???

小道具である一角獣の牙などの使い方もおもしろいです。こっちのトリックはあんまりいただけないですが。
目を突き刺される、というのは想像しただけで怖いです。

前作「聖女の塔 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)もそうでしたが、同じ人物が登場することもあり、ミステリ的には、あれれ? と思うような趣向が盛り込まれていますが、本格ミステリという枠組みよりは、むしろ、対決もの、という枠組みと捉えて、よし、とすべきものなのだと思います。京介を目の敵にする人物との対決という枠組みも底流に流れていますので。
(その趣向を除く部分では、本格ミステリとして閉じるようにできていて、そこはそれなりに上述のとおり楽しめます)

しかしなぁ、
「彼(注:蒼のことです)が僕の最大の弱点だとは、いまさら隠しようがないし」(34ページ)
なんて京介のセリフ、いかがなもんでしょうか...
裏返しの蒼からの見方は、166ページから縷々とつづられるのですが、こっちもなぁ...
「親や庇護者に対する子供の思いと『恋』は、どんなふうにどれだけ違うものなのだろうか。」(168ページ)と付け加えられてもなぁ...
でも、まあ、蒼が恋をした、というのはいいことです。きっと。

文庫でそろったことですし、残り2冊
「黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)
「燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)
を楽しみに読んでいきます。


<蛇足>
我が仏、隣の宝、婿舅、天下の戦、人の善悪(108ページ)
室町時代の連歌師、牡丹花肖柏がとなえた、茶事の席で口にしてはならない話題の一覧だそうです。
知らなかった。
含蓄深くってよいですね。


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