レプリカたちの夜 [日本の作家 あ行]
<裏表紙作品紹介>
「わかりませんよ。なにがあってもおかしくはない世の中ですから」--登場人物が呟くこのセリフこそ、はてしなく奇妙で、だが最高に魅力的な本作の世界観を代弁している。
動物のレプリカ製造工場に勤める往本は、残業中の深夜、動くシロクマを目撃する。だが、この世界において、野生のシロクマはとういn絶滅したはずだった。往本は工場長に呼び出され、動くシロクマの正体を内密に探るよう頼まれる。
はたしてシロクマは本物なのか? それとも工場で作ったレプリカに人が入っているのか? 入っているとしたら、それは一体誰なのか?--往本と共にシロクマを追ううちに、読み手はいつのまにか、ぐにゃりと歪んだ世界に足を踏み入れている。
気づけば、ものごとはかなりの混乱をきたしている。あったはずのものがなかったり、なかったはずのものが現れたり。そして、その混沌の中で交わされる、妙な登場人物たちのヘンテコな会話に愛着を覚えるようになった頃には、あなたはその世界からすっかり抜け出せなくなっている。
単行本です。
第2回新潮ミステリー大賞受賞作です。
上で引用した内容紹介文、あれで1/3程度なんです。長いので、全部引用するのはやめました。
帯に、選考委員をつとめた伊坂幸太郎のことばが載っています。
いわく
「とにかくこの小説を世に出すべきだと思いました。
ミステリーかどうか、そんなことはどうでもいいなあ、と感じるほど僕はこの作品を気に入っています。」
作品の評価は別にして、ミステリーの賞を授賞するのなら、その作品はミステリーでないと困ると思うのですが...
正直この作品をミステリーとして評価するのは難しいと思います。
ミステリー的な展開もあることはありますが、明らかに力点はそこにはない。
次々と出てくる謎は、ほとんど解かれません。
この作品は、大賞ではなく、せめて審査員特別賞とかいう枠組みで出版すべきではなかったか、と。
あるいは、いっそ伊坂幸太郎賞?
とはいえ、この小説をつまらないと思った、ということではありません。
ちゃんと理解できたか、という質問にもまったく自信がないという回答しかできませんが、不思議なおもしろさを感じました。
レプリカと本物、という分け方は、畢竟、人間とは、人とは、自分とは、という問いに重なっていくわけで、そりゃ難しい。
普通じゃない登場人物たちの奇妙な会話は、確かにクセになります。
おそらくはミステリではないのでしょうが、次はどんな作品を出してくるのか、気になる作家です。
コメント 0