一千億の針 [海外の作家 か行]
<裏表紙あらすじ>
『20億の針』から7年。ボブの体内には、すぐれた知性をもつゼリー状の異星人が共生し、体内の病原菌を殺したり怪我の出血をとめたりしていた。しかし最近になって、ボブの体調が悪化しはじめた。日に日に弱りゆくボブを救うには、7年前に島の近海へ墜落した異星人たちの宇宙船を探しだし、一千億の星の中からただひとつの、彼らの母星の科学者に連絡をとらなければならないのだ。
今回の「一千億の針【新版】」 (創元SF文庫)は、タイトルからも明らかなように、「20億の針【新訳版】」 (創元SF文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)の続編です。
「20億の針」 (創元SF文庫)の原書が1950年刊行で、「一千億の針」 (創元SF文庫)が1978年ですから、なんと28年ぶりの続編。待望の続編、といったところでしょうか。
宇宙人"捕り手(ハンター)"のおかげでつつがなく息災に過ごしていたはずのボブが、体調不良。
"捕り手(ハンター)"がいるがために、免疫不全が起きてしまう。
まず、このアイデアが秀逸ですね。いかにも人間の体に起きそうです。
で、これを解決するために、"捕り手(ハンター)"の母星とコンタクトしなければ、と。
でも、どうやって??
それは"捕り手(ハンター)"と"殺し屋(キラー)"が地球へやって来たときに乗っていた船を探し出せば、なんとかなる、母星でも、"捕り手(ハンター)"と"殺し屋(キラー)"が飛んで行った方向は掴んでいるはずだから...と。
若干心もとない感じもありますが、それなりの理屈はつけてあります。このあたりの塩梅が安心して読める理由なんでしょうね、きっと。
宇宙船捜し、になるわけですが、いろいろと事件が起こり、さて妨害されているのでは?
妨害されるということは、ひょっとしてやっつけたはずの"殺し屋(キラー)"が生き残っていて邪魔している?
なんかドキドキする展開ではありませんか。
ボブは疲れやすくなっていて動きが悪くなっている一方、"捕り手(ハンター)"は結構激しく活躍します。
この"捕り手(ハンター)"が非常にいいやつで、理性的。安心して読めます。この安定感がポイントですね。
ミステリ的な手法あるいはサスペンスの手法をあちこちに使って読者の興味をひっぱっていくので楽しく読めますが、ラストは若干拍子抜け、というか、うーん、今までの努力はなんだったの? 系の脱力もの。とはいえ、ボブにとっては一安心になっているのがありがたい。
ボブにも、"捕り手(ハンター)"にも、結構、愛着が湧いてきちゃってます。
<蛇足>
「一千億の針」 という邦題は、当然前作「20億の針」 を意識したものですが、「20億の針」 の原題には20億というのがなかったのと同様、今回の「一千億の針」 の原題にも一千億というのは出てきません。まあ、こじつけですね。
原題:Through the Eye of a Needle
著者:Hal Clement
刊行:1978年
訳者:小隅黎
タグ:ハル・クレメント
コメント 0