殺人者の湿地 [海外の作家 か行]
単行本です。
アンドリュウ・ガーヴの作品を読むのはいつ以来だろう...
「ヒルダよ眠れ」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「カックー線事件」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「遠い砂」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
あたりを大昔に読んだ記憶がありますが、内容は覚えていませんね。
ただ、サスペンスものとしておもしろかったような感じがしていて、この「殺人者の湿地」 (論創海外ミステリ)を手に取りました。
論創社ミステリって、こういう地味な作品をひょいと訳してくれるので、ありがたいですね。
久しぶりに読んだガーヴですが、おもしろかったですよ。
福井健太の解説からあらすじを引用します。
ケンブリッジ州のトレーラー販売所に勤めるアラン・ハントは、ノルウェー旅行中にホテルで出逢った美女グヴェンダ・ニコルズを籠絡した。「道徳心や両親といったものが完全に欠落していた」ハントは、グヴェンダに偽の住所を渡して帰国し、資産家の娘(事実上の婚約者)スーザン・エーンジャーのもとへ戻るが、やがて予想外の事態が勃発した。ハントを探し当てたグヴェンダが「おなかに赤ちゃんがいるの」と告げたのである。ハントは「ぼくらは結婚すべきだと思う」とグヴェンダを丸め込み、大急ぎである計画を練るのだった。
その翌週、オッケン村の警察に匿名の手紙が届いた。村の湿地で男が女を殺したと思われる光景を目撃した、男はトレーラー販売所の従業員に似ている--という内容を重んじた警察は、ケンブリッジ州犯罪捜査課のジョン・ニールド警部とトム・ダイソン巡査部長を現地に赴かせる。二人はハントの言い分を疑いながらも、グヴェンダを捜そうとするが……
この解説、フェアに書こうとして、かえってポイントが浮き上がってしまっているきらいはありますが、コンパクトにまとまっていると思います。
作者の用意したちょっとした仕掛けは、まあ大したことない(し、割と早い段階で明かされる)ので取り立てていうことはないですが、作品そのものはサスペンス物として十分楽しめますよ。
なんとまあ身勝手な男だなぁ、とハントのことを思いつつも、すっかり作者の手中に嵌っちゃった気がします。
警察側の二人もなかなかいい感じですしね。
イギリスの湿地を舞台にしている、なんていかにも渋そうで、たしかに渋い展開を見せはしますが、ちゃんとサスペンスものとして読者を引っ張っていってくれますし、ラストも読後感が悪くならないよう精いっぱい配慮してくれています。このバランス感というか安定感こそがポイントなのかもしれません。
ということで、アンドリュウ・ガーヴ、久々に読めて良かったです。
未訳のものの翻訳を進めることと、既刊分の復刊をお願いしたいですね。
原題:Murderer's Fen
作者:Andrew Garve
刊行:1966年
訳者:水野恵
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