マジシャンは騙りを破る [海外の作家 か行]
<裏表紙あらすじ>
ミネソタ州ミネアポリスとセントポール。ツインシティと呼ばれるこのあたりの川沿いの洞窟で、今夜、死後の世界と交信できるという男のショーがテレビで生中継される。マジシャンのぼくの役どころは、そのインチキを暴くこと。それがうまくいった翌日、ぼくは警察に連れていかれる。件の男が殺され、ぼくが容疑者のひとりだというのだ……。ライトなミステリ・シリーズ第一弾。
今年4月に読んだ本、一冊目です。
愉快な新シリーズの開幕です。
コージー・ミステリとはジャンルがちょっと違いますが、読み心地のよいミステリです。
まず、主人公であるぼく・イーライ・マークスをはじめとするキャラクターがいいですね。
インチキ超能力者対マジシャンという構図は常道というか王道というか、まあよくある設定なんですが、この対決シーンが終わるころにはすっかりイーライ・マークスのファンになっていました。
子供の前でマジックを披露するエピソードもかなりいい感じです。
なにより余裕の感じられる語り口がよいですね。
また、インチキ超能力者対マジシャンということを扱っていても、一方で超能力とか超常現象そのものを否定しきっていないのも興味深い。
結構あたらしい試みなのではないかな、と感じました。
いろんな登場人物たち、シリーズ次巻以降にもぜひ出てきてほしいですね。
ミステリ的には、謎解きが行き当たりばったりで、お世辞にもうまくいっているとは言えないと思いますが、意外な犯人を演出しようとしている点は買えますし、超能力者やマジシャンのあふれた世界で、普通のといいますか、現実的なといいますか、堅実な動機(変な表現ですが)を提示してくれたのもなかなかセンスあるなぁ、と感じました。
あらすじでは、ライトなミステリと書かれていますが、古い表現だと軽本格というのか、こういう手触りの作品、意外とすくないと思いますので、ぜひ続けていってほしいと思います。読みます!
原題は“The Ambitious Card”
67ページ以降、主人公が演じて見せてくれますが、マジックのネタ(技?)の名前です。
原題:The Ambitious Card
作者:John Gaspard
刊行:2012年
訳者:法村里絵
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