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ロセアンナ [海外の作家 マイ・シューヴァル ペール・ヴァール]


刑事マルティン・ベックロセアンナ (角川文庫)

刑事マルティン・ベックロセアンナ (角川文庫)

  • 作者: マイ・シューヴァル
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/09/25
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ボーレンスフルトの閘門で、全裸女性の絞殺死体が見つかった。身元不明の遺体には誰からの問い合わせもなく、事件は膠着状態に陥ったかに見えた時、アメリカの警察から一通の電報が届いた。「ソレハコッチノサガシテイルオンナダ」。ロセアンナ・マッグロー、27歳。この知らせをきっかけに、刑事マルティン・ベックは、ロセアンナと関係をもった男達についての証言を探ってゆくが――。警察小説の金字塔シリーズ・第一作。


今年4月に読んだ本、二冊目です。今更、ですみません。
マイ・シューヴァル ペール・ヴァールーという夫婦作家による、世界的に有名な警察小説のシリーズ第1作の新訳です。
新訳というか、もともと以前翻訳されていたのは、原語(スウェーデン語)を英語に翻訳したものを日本語にしたもの=重訳だったのですが、今回は原語(スウェーデン語)から日本語への直接の翻訳ですね。スウェーデン語、わかりませんが、直接訳されたもののほうがよさげですよね。

このシリーズ、代表作(といっていいと思います)の「笑う警官」 (角川文庫)は旧訳で読んでいますが(左のリンクは新訳版に貼っています)、「ロセアンナ」は初めて読みます。

身元不明死体で幕を開けますが、こういうの警察小説に多いですよね。
ルース・レンデルの「薔薇の殺意」 (角川文庫)の評で、瀬戸川猛資が触れていた通りでもあります。
本書は早めに身元が判明します。(76ページ)
そして、生前の被害者の様子が捜査されます。
時代背景として、フリーセックスがもてはやされた(?)というのがあって、性の自由と女性の自立がうんぬんかんぬんと訳者あとがきに書かれていますが、警察小説で、わりと長く被害者の性生活が語られるのが意外でした。
このあたりも斬新だったのでは?
この部分、直接的に事件の解明に役立つものではないように思いますが、その後真相が判明したときに鮮やかに蘇ってきます。
そのあと、大詰め。犯人をマルティン・ベックたちが罠にかけます。

こういう進み方、いまでは警察小説でおなじみのパターンですが、原書が出た1965年では目新しかったのかもしれません。その意味でも意義深い作品なのでしょうね。

シリーズが順次訳されていくようなので、楽しみに読み進んでいきます。

ヘニング・マンケルが献辞を寄せているのも、読みどころですね、この新訳版の。


<蛇足>
今回の翻訳はスウェーデン語からの翻訳で、「訳者あとがき」でも触れられていますが、タイトルが微妙に変わっています。
以前の翻訳は「ロゼアンナ」と濁音だったんですね。
それが今回は「ロセアンナ」
これは、
「スウェーデン語にはザジズゼゾの濁音がなく、サシスセソとなるので、まずはタイトルから言語に忠実に『ロセアンナ』と訳すことにした。地名と人名はすべてスウェーデン語の発音に準じた」(365ページ)
ということらしいのですが、これでよいのでしょうか?
ROSEANNA というのは、被害者の名前なんですね。あらすじにもありますが、アメリカ人の... 
アメリカ人の名前なら、スウェーデン風に「ロセアンナ」ではなく「ロゼアンナ」と読むべきじゃなかろうか、と。
マルティン・ベックたちは「ロセアンナ」と発音していたのでしょうから、それでいいんだ、ということもありえなくはないと思いますが、なんだか気になります。



原題:ROSEANNA
作者:Maj Sjowall & Per Wahloo
刊行:1965年
訳者:柳沢由実子




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