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武家屋敷の殺人 [日本の作家 か行]

武家屋敷の殺人 (講談社文庫)

武家屋敷の殺人 (講談社文庫)

  • 作者: 小島 正樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/08/11
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
孤児院育ちの美女から生家を探してほしいとの依頼を受けた弁護士・川路。唯一の手がかりは、20年前の殺人と蘇るミイラについて書かれた異様な日記のみ。友人・那珂の助けを借りてついに家を突き止めるが、そこは江戸時代から存続するいわく付きの武家屋敷だった。そして新たな殺人が……。謎とトリック2倍増しミステリ!


今年5月に読んだ3冊目の本です。
小島正樹の本としては、島田荘司との共著である「天に還る舟」 (SSKノベルズ)を除いて考えて、「十三回忌」 (双葉文庫) (ブログの感想ページへのリンクはこちら)に続く第2作です。
文庫化された順番の関係で、次の第三作「扼殺のロンド」 (双葉文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)を先に読んでいます。
「十三回忌」 「扼殺のロンド」と違い探偵役が海老原浩一ではありません。出版社が違うからかな?

千街晶之の解説に、ノベルス版の著者のコメントが引用されています。
一晩で壁の色が変わり、空からは人が降り、塀は血を流し、床がケタケタ笑う。
そんな、さながら悪霊に魅入られた武家屋敷では、ミイラが蘇り、死体が瞬間移動し、氷室が跡形なく消え去ります。
江戸時代から続く悪意の連鎖と数々のなぞ。どうかひととき、この屋敷に滞在くださいませ。

この著者のコメントからも、「やりすぎミステリー」の雰囲気が漂ってきますね。

手記(日記)を頼りに生家を探すというわけですが、その家では「一晩で壁の色が変わり、空からは人が降り、塀は血を流し、床がケタケタ笑う。そんな、さながら悪霊に魅入られた武家屋敷では、ミイラが蘇り、死体が瞬間移動し、氷室が跡形なく消え去ります。」
というのです。
これに加えて、響き渡る死者の叫び声、だの、見えない雹だの、もう不思議な事象のてんこ盛りです。
これが、すっと論理的に解決されたら、気持ちいいですよね。
いったんは精神的な病による幻視・幻聴と川路が考えるものの、那珂により別の解決が提示されます。
すごいのは、そのほとんどの謎解きが、文庫本で590ページを超えるこの作品の、最初のほう、わずか150ページくらいのところ、第一章のうちになされてしまうことです。
その後、第二章で別の人物の観点から物語が語られると、またまた別の謎がどんどん湧き出てくる。

この後から後から謎が追加されるぜいたくさ、ほかの作家では味わえない部分だと思います。
特にこの「武家屋敷の殺人」 は登場人物たちの思惑が絡み合い、幾重にも重なった謎の大伽藍になっています。
小島正樹、ステキ。
真相も果たしてどこまでつきとめればよいのやら。
二転三転するどんでん返しの連続もぜいたくな趣向です。

しかし、ちょっと那珂邦彦の扱いがかわいそうな気もします。
川路、那珂コンビは、このあと「四月の橋」 (講談社ノベルス)にも出てくるそうなので、そちらで那珂のその後を確認したいです。


タグ:小島正樹
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