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蕃東国年代記 [日本の作家 な行]


蕃東国年代記 (創元推理文庫)

蕃東国年代記 (創元推理文庫)

  • 作者: 西崎 憲
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/02/28
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
東の海に浮かぶ麗しき小国〈蕃東(ばんどん)〉に暮らす、宮廷の知識や儀礼を司る貴族の家に生まれた青年・宇内(うない)と、その従者を務める十七歳の藍佐(らんざ)。彼らが出合った驚異、あるいは目にすることのなかった神秘が、古典の風格を湛えた瑞々しい(みずみず)筆致で描かれる。幸田露伴、澁澤龍彦らの系譜に連なり、古今東西の物語に通じる稀代の語り手による、繊細な細工物のような五篇の綺譚。


ロンドン勤務にかかる会社の福利厚生策の一つに、日本の本を一定限度で送料会社負担で買える制度があり、それを使って買いました! 海外まで送ってもらうのですが、注文してすぐに届きました。すごい!

ミステリではなく、ファンタジーですね。
創元推理文庫恒例で扉のあらすじも引用します。
これぞ綺譚のなかの綺譚!--唐と倭国の間に浮かぶ麗しき小国〈蕃東(ばんどん)〉。これは蕃東第一の都景京(けいきょう)の、臨光帝の御代に属する物語である。宮廷の知識や儀礼を司る貴族の家に生まれ、気ままに日々を過ごす青年宇内と従者を務める十七歳の藍佐。彼らが出合った驚異、あるいは目にすることのなかった神秘を、怪奇幻想分野の第一人者である翻訳家にしてアンソロジストが鮮やかに描く、天に昇って雨を降らせる竜、海辺の遊興都市で語られる奇談、三つの宝玉を探索する若き日の宇内の旅路ーー繊細な細工物のような五編を収めた、空想世界の御伽草子。

作者の西崎憲は扉のあらすじで「怪奇幻想分野の第一人者である翻訳家にしてアンソロジスト」と書かれていますが、「世界の果ての庭 (ショート・ストーリーズ) 」(創元SF文庫)で第14回日本ファンタジーノベル大賞を受賞している、作家でもあります。

世界の果ての庭 (ショート・ストーリーズ) (創元SF文庫)

世界の果ての庭 (ショート・ストーリーズ) (創元SF文庫)

  • 作者: 西崎 憲
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/04/26
  • メディア: 文庫

「世界の果ての庭 (ショート・ストーリーズ) 」は、新潮社から出ていた単行本で昔読みましたが、細かな断章が連なった作品で、ちゃんと理解できてないというか、わからないことが多いものの、なんだか楽しい読み心地が味わえたので、久しぶりに文庫化されたこの「蕃東国年代記」も読んでみたくなって買うことにしました。

扉のあらすじが要領よく設定を紹介していますが、唐が618年 - 907年であること、日本が倭国とされていることからも、中身の雰囲気的にも、時代背景は日本でいうと平安時代くらいでしょうか? 舞台となっている蕃東は、位置的には、なんとなく沖縄か台湾あたりのような気もしますが、文化的あるいは気候的な雰囲気は大きく異なっているようで、日本が近い感じですね。
「雨竜見物」
「霧と煙」
「海林にて」
「有明中将」
「気獣と宝玉」
の5つの物語が語られます。

冒頭の「雨竜見物」で、蕃東の典雅な貴族生活が垣間見れます。話の最後でさらっと明かされる妖怪(?) 河蜘蛛をめぐる宇内の行動にはびっくりしました。昔を舞台にしたファンタジーで雰囲気だけ味わえればいいか、と思っていたら、こんなのが仕込まれていたとは。
ところが「霧と煙」には、宇内も藍佐も出てきません。貴族らしい遊び舟合わせの後遭難(?)、漂流した舟を舞台にしています。4人の登場人物は、大事なものをくれれば助けてやる、と言われるのですが、平民と呼ばれる人物への「お前、何も持たないことをくれるか、お前、何も持たないことをくれたら助けてやるぞ」という問いかけが意味深で、しかも、他の三人は同意したのに平民は同意しないまま助かるのです! どういうことだろう、と狐につままれたよう。
「海林にて」は藍佐の物語で、公務で訪れた海林の都の遊園・七空楼で居合わせた二人の男と披露しあう面白い話、という設定です。これも最後で予想外の方向のオチがついてびっくりしました。
続く「有明中将」は類い希な美しさを持ってこの世に生まれた有明中将を愛したふたり、志波と東乃の物語。印象に残りましたが、それ以上に、この二人以外にも有明中将のために犠牲になった人はいっぱいいたのだろうな、と思って切ない物語がいっそう強く感じられました。
最後の「気獣と宝玉」は、本の半分ほどを占める長さの中編ですが、かぐや姫(竹取物語)を思わせる婿取譚の枠組みで、宇内が三玉という宝物を探索に行く物語。こういう物語には一定のパターンがあり、この「気獣と宝玉」もパターンに沿って進んでいくのですが、次第にずれていくところが面白かったですね。

こういうファンタジーは、ミステリよりは結構が難しいのでいい解説が欲しくなるところ、この「蕃東国年代記」には米澤穂信の解説がついていて満足できました。


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