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キネマの天使 レンズの奥の殺人者 [日本の作家 赤川次郎]


キネマの天使 レンズの奥の殺人者

キネマの天使 レンズの奥の殺人者

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/12/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


<裏表紙帯あらすじ>
Q.スクリプターとは?
A.映画の撮影現場で、フィルムを繋ぐときに矛盾が出ないように、役者の動き・衣装など映像に写るすべてを記録&管理する係。
スクリプター・東風亜矢子。ベテランの多い映画業界ではまだまだ若手。人気映画監督が率いるチーム〈正木組〉で、現場全体を冷静に眺めることができるスクリプターゆえに、トラブル解決に奔走する日々だ。カメラマン、録音技師、照明……職人気質のスタッフたちと、強烈な個性をもった役者たちと共に取り組む新作撮影もこれからが佳境――という最中、アクションシーンに欠かせないスタントマンが刺殺されてしまう。一体誰が、何のために!?
ニューヒロインにして名探偵は、
映画について何でも知ってるスクリプター!


単行本です。航空便で持ってきた本です。
帯に周防監督が
「物語と登場人物を知り尽くすスクリプター。
気をよく見るが、森を忘れない――
細部に目を配りながら、俯瞰も怠らない。
なるほど、探偵にピッタリだ!
とコメントを寄せられていて、読んでみるとスクリプターは確かに探偵役にはうってつけのポジションだなぁ、と思いました。

映画界、芸能界、というのは赤川次郎でおなじみの世界ですし、テンポ早く次々と起こる出来事、大勢の登場人物を手際よく捌いていくところは、安心して浸れる世界でした。
肝心のスクリプターの仕事が、言葉でいちいち説明されるのではなく、亜矢子の行動などを通して浮かび上がってくるあたりはさすがベテラン作家。

映画への思い入れも感じられます。
『でも、ハリウッドのように、巨大なマシンのような「CG映画自動製造機」になってしまうのもいやだ』(139ページ)
という記述があります。主人公亜矢子の感慨なのですが、作者:赤川次郎の主張でもありますね。
「CG映画自動製造機」ですか。なかなか痛烈なコメントですね。ただ「CG映画自動製造機」であったとしても、ハリウッド映画にはハリウッドの映画のよさがあると思うので、ハリウッド映画好きとしてはちょっと複雑な気分ですが、こういうところはもっと出てきてもいいのかもしれません。

また、
「業界の言葉で『笑う』とは、邪魔なものを片付ける、という意味である」(167ページ)
と業界ならではの知識をヒントにするところがありますが、せっかくこういう舞台と探偵役・登場人物なので、こういう部分をもっともっと盛り込んでくれると面白いのに、と思いました。

ただ、ミステリとしては、うーん、この動機はいくら映画界、芸能界が狂気の世界(失礼)といっても、納得できるレベルを超えちゃってる感がありますね。
<ちなみに、帯の中江有里さん(女優・作家)のコメントに「映画という美しき夢と狂気の世界。」というのがあります>
この動機を前提にするなら、犯人の人物像をもっと途中でも色濃く出しておく必要があったのではないでしょうか?

最後に...
本そのものではなくて、折り込みのチラシ(講談社2017年12月の新刊案内)に、
「クランクアップまでに謎を解け
ニューヒロインはスクリプター(記録係) 新シリーズ堂々開幕!」
と書いてあって、びっくりしました。
あれ? 「三世代探偵団 次の扉に棲む死神」に続いてまたまた新シリーズですか... なんと執筆意欲旺盛なこと。それはそれでファンとしては喜ばしいのですが...
ただでさえ赤川次郎はシリーズが多いのに、また...
「三世代探偵団 次の扉に棲む死神」感想にも書きましたが、いつもの赤川次郎節、といいたい感じの話でして、正直新シリーズとして打ち出す必然性があまり感じられません。このシリーズならでは特色をどう出していくかが問われていくので、このシリーズについても、そのあたりを気にしながら読み進めていけたらと思います、というところです。

<蛇足1>
「よし、今度このラーメンチェーンのCMに使ってやる」(152ページ)
と若いタレントを気に入った社長(?) が言うシーンがあるのですが、あまりラーメンチェーンのCMって見ないですよね...知らないだけで、ラーメン屋さんもCMばんばんやっていますか?

<蛇足2>
「私も一流のスクリプターです」(166ページ)
と亜矢子が言うシーンがあるのですが、亜矢子の性格からして自分で一流って、言うかなぁ、とちょっと不思議な感じがしました。

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