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きみのため青く光る [日本の作家 似鳥鶏]

きみのために青く光る (角川文庫)

きみのために青く光る (角川文庫)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/07/25
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
青藍病。それは心の不安に根ざして発症するとされる異能力だ。力が発動すると身体が青く光る共通点以外、能力はバラバラ。たとえば動物から攻撃される能力や、念じるだけで生き物を殺せる能力、はたまた人の死期を悟る能力など――。思わぬ力を手に入れた男女が選ぶ運命とは。もしも不思議な力を手に入れたなら、あなたは何のために使いますか? 愛おしく切ない青春ファンタジック・ミステリ! 『青藍病治療マニュアル』改題。

いつもお世話になっているHPによりますと、似鳥鶏15作目の作品です。
単行本のときのタイトルは、「青藍病治療マニュアル」
あらすじにも帯にも「青春ファンタジック・ミステリ」と書いてありまして、その表現がぴったりの作品です。改題後のタイトルのほうが内容を連想しやすいかもしれませんね。
「犬が光る」
「この世界に二人だけ」
「年収の魔法使い」
「嘘をつく。そして決して離さない」
4編収録の連作といったほうがよいですかね?

この作品における青藍病(異能症とも呼ばれています)は、要するところ特殊能力を有するようになる疾病でして、その内容が人それぞれというのがポイントですね。
このような特殊能力を持ってしまった人の物語、特に哀しみに焦点をあてたものは、日本作家お得意のジャンルですね。
ただ、これまではホラー系の作品が多かったような印象で、この「きみのために青く光る」 (角川文庫)のような扱いは新しいかもしれません。青少年期にふさわしいテーマかも、とも思いました。
(もっとも、ラノベにたくさんありそうな気がしますが)

「犬が光る」は、動物から攻撃されることができる能力、というもので、こんな能力どうやって使うねん!? という感じですが、有効活用したとき、「おおっ」と膝を打つような感じ。かなり特殊だけどね。それにつれて、僕の成長物語となると当時に、ボーイ・ミーツ・ガールが深まっていくのがよかったですね。

「この世界に二人だけ」は、かなり物騒ですが、念じるだけで生き物を殺せる能力。
同じ能力を持つものが二人いるというのがポイントですね。
この作品には、「なぜ人を殺してはいけないか?」という問いも扱われていまして、興味深いです。
「なぜ皆は『人を殺してはいけない』と言うのか?」に言い換えるところがミソとなっています。

「年収の魔法使い」は、他人の年収、しかも手取りベースがわかるという能力。こんなもんミステリ、あるいはサスペンス的にどう使うんじゃ? と思いますが、さすが似鳥鶏うまいもんですねぇ。ちょっとうまくいくかな? と懸念するところはありますが...。
それよりもこの作品で一番興味を惹いたのは、若干ネタバレですが、誤振込の取り扱いですね。
不法利得返還請求権、不当原因給付と組み合わせてとてもおもしろい中身になっています。これを利用した前例(となるようなミステリ作品)なかったでしょうか? 思いつきませんが。

最後の「嘘をつく。そして決して離さない」は、あらすじによると「人の死期を悟る能力」。ラストを飾るにふさわしい能力と思われますし、一冊の中で一番長い作品で、「犬が光る」の主人公がチョイ役で友情出演(?) しています。

このパターン、シリーズ化可能ですが、続編書かれているのでしょうか?

<蛇足>
「札幌の高校生は北大のことを『そこの大学』って言うんだね」(323ページ)
というセリフがあります。おもしろいですね。
知り合いの北大出身者に聞いてみましたが、高校が札幌ではなかったからかもしれませんが、聞いたことない、と。時代が違うのかも...


タグ:似鳥鶏
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