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上石神井さよならレボリューション [日本の作家 な行]


上石神井さよならレボリューション (集英社文庫)

上石神井さよならレボリューション (集英社文庫)

  • 作者: 長沢 樹
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2016/09/16
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
成績不振の写真部員・設楽洋輔は、眉目秀麗で天才で変態の岡江和馬の勉強指導と引換えに『フェティシズムの捕獲』を請け負うことに。高校一の美少女で生物部員の愛香の依頼で一緒に野鳥の撮影をしつつチャンスを狙う中、様々な「消失」事件に出会い……。天真瀾漫で運動神経抜群の愛香の突飛な行動、冷静かつ的確な岡江の推理を参考にしながら、設楽は意外な事件の真相に迫る。青春ミステリー!


「消失グラデーション」 (角川文庫)(感想ページへのリンクはこちら
「夏服パースペクティヴ」 (角川文庫)(感想ページへのリンクはこちら
に続く、長沢樹の第3作です。
「上石神井さよならレボリューション」 (集英社文庫)というタイトル、今どき佐野元春かよ、と独りで突っ込んでしまいました。今の高校生、佐野元春って知ってるんでしょうか?
(為念ですが、中身は佐野元春とは関係ありません。)

前2作とは主人公が違います。作品の趣もまったく違います。
写真部員・設楽洋輔が主人公をつとめ、岡江和馬が探偵役をつとめます。
「落合川トリジン・フライ」
「残堀川サマー・イタシブセ」
「七里ヶ浜ヴァニッシュメント&クライシス」
「恋ヶ窪スワントーン・ラブ」
「上石神井さよならレボリューション」
の5編収録の連作短編集です。

各話のタイトルに地名が冠してありますが、いずれの作品も地元密着というか、局地的というか、ものすごーくローカルな地理的状況がキーとなる作品が集まっています。
なので、各話にその局地状況をわかりやすくするために図版が挿入されています。

「落合川トリジン・フライ」を読んだときには、岡江和馬のいうフェティシズムにちょっとげんなりし、謎解きもちょっと脱力気味で、おやおや~、と思ったのですが、そのうちこの設楽と岡江をめぐる設定にも慣れましたし、被写体である愛香が不思議な魅力を感じるようになりました。まあ、愛香みたいな人物はこの世にいないよなー、と思ってしまいますが、ご愛敬というところでしょうか。もっとも女性がこの作品を読んでどう感じるか、疑問に思ってしまうところを否定できませんが...
脱力気味の謎解きも、そのうちそれを楽しみに思うようになってきました。
いいように作者に操られてしまったかも。

「残堀川サマー・イタシブセ」の謎解きの馬鹿馬鹿しさにそのことは現れているように思います。
不可能状況だと勝手に思い込まされてるだけで、ちっとも不可能じゃなかった、というのはミステリでは王道なんですが、いや、愛香のキャラクターとか、局地的な状況とか、うまく活用してまとまっているように思いました。

「七里ヶ浜ヴァニッシュメント&クライシス」の馬鹿馬鹿しさも堂に入ったもので、これはもう反則と言われても仕方ないくらいのレベル感。
愛香に加えて、和馬の姉という大物登場でにぎやかに盛り上がります。

「恋ヶ窪スワントーン・ラブ」は大学のプロレスサークルを舞台にしていて、この1冊の中ではもっともおとなしめ。

そして最終話「上石神井さよならレボリューション」は、和馬に一泡吹かせたい人物、というのに設楽が協力する、という話で、いままでの話に登場した人物たちも再出演し、オールキャストっぽい感じで楽しい。それぞれの登場人物たちの特性を活かして作戦が実行されていく、という段取りが素晴らしいと思いました。

しかし、鳥の写真って、撮るのが難しそうですね...

<蛇足>
「学校側に報告したり、事を公にする気はない。」(274ページ)
~たり、~たりが崩れていて、ちょっと落ち着きませんでした。




タグ:長沢樹
nice!(17)  コメント(2) 
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コメント 2

ピンキィモモ

こんにちは。
nice!と訪問いただき、ありがとうございました。
ミステリや推理小説は、たまに読む程度です^^;
by ピンキィモモ (2018-12-18 17:52) 

31

ピンキィモモさん、ご訪問&nice! ありがとうございます。
by 31 (2018-12-20 04:37) 

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