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パンドラの鳥籠 [日本の作家 高田崇史]

パンドラの鳥籠: 毒草師 (新潮文庫)

パンドラの鳥籠: 毒草師 (新潮文庫)

  • 作者: 高田 崇史
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/09/27
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
丹後半島で二年前、生薬学者が姿を消した。地域には三百歳の魔女が棲むといわれる洋館があり、首なし死体も発見されている。編集者・西田真規は、薬学の鬼才にして唯我独尊博覧強記の毒草師・御名形史紋、その助手の神凪百合と共に謎を追う。浦島太郎の「玉手箱」とギリシャ神話「パンドラの箱」がリンクする時、真相に繋がる一筋の道が現れる。知的スリルに満ちた歴史民俗ミステリ。


QEDシリーズのスピンオフ、毒草師シリーズで、
「毒草師 QED Another Story」 (講談社文庫)
「毒草師 白蛇の洗礼」 (朝日文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
に続く第3弾です。

今回の歴史上(?)の謎は、ベースが浦島太郎なんですが、そこから七夕や羽衣伝説というおとぎ話系に加えて、日本史に潜む大きな秘密が暴かれる、という展開になります。
現在まで残されている古代の髪の毛や亀の甲羅について、指紋が残っているかも、あるいはDNA鑑定できる、と考えるのは面白いですねぇ。(359ページ)
御名形に導かれて、あれもこれも結びつき、なんだか壮大な歴史絵巻が展開した気分。
これこそが高田崇史の作品を読む醍醐味ですよねぇ...と一人で満足してしまいました。

主たる舞台は丹後なんですが、あまり行ったこともないんですよね。
天の橋立とか、舟屋で有名な伊根の方とか、いったことあるはずなんですがあんまり覚えていません。
浦島太郎といえば、丹後、のようです。
まず室町時代に成立した「御伽草子」に出てくる(77ページ)もので、その舞台が丹後国。
でも物語の基になったお話は、「古事記」や「日本書紀」にも、そして「丹後国風土記」にも載っている!(81ページ)
浦島太郎のほかにも、「羽衣」「徐福」「蓬莱山」と丹後国は伝説の宝庫(117ページ)です。
丹後国一の宮・籠(この)神社くらい、ちゃんと意識して行ってもよいかもしれないと思いました。

ミステリらしい事件の方は、怪しい廃屋で繰り広げられる妖しい事件、なわけですが、こちらは毒草師ならでは(?) の毒物・薬物を使ったもの(と書くとネタバレには違いないのですが、このシリーズでこの辺は書いてしまってよいでしょう、きっと)で、真偽というか、こういうことが起こりうるのかどうかぼくにはわからないのですが、前作「毒草師 白蛇の洗礼」ほどの荒技ではなく、そうかもな、と納得できます。

しかし、古からのものを守る、守っていく家って、哀しいですねぇ...とそんな感想を抱いた作品でした。


<蛇足1>
『丹後半島北東部の間人(たいざ)には、聖徳太子の母である間人(はしうど)皇后が、戦火を避けるために一時期住んでいた。この、とても普通に読めない地名は、皇后がこの地を「退座」された際に「間人」を読み替えたのだという。』(146ページ)
という説明があって、なるほどー、と思いました。
昔こういういわれを聞いていたかもしれませんが、記憶にはすっかり残っておらず、ちょっとうれしくなりました。

<蛇足2>
「関裕二も、彼らの風貌や年齢などを鑑みると、塩土老翁と武内宿禰は、同一人物と考えて差し支えないだろうという説を唱えている。」(334ページ)
というせりふを御名形史紋が言うシーンがあります。
博覧強記で、古い文献もがんがん読んでいる御名形史紋であっても、「~を鑑みる」って言うんですねぇ... ひょっとしたらここは、「~を鑑みる」という語も含めて関裕二の引用、ということなのかもしれませんが...

<蛇足3>
「もっとも、神社や和歌に関しては、ぼくよりもっと詳しい暇人もいますが」(232ページ)
とあっさり御名形がいうシーンがあるのですが、これって、タタルのことですよね!!

<蛇足4>
かなり謎解きシーンも進んできたところで、御名形史紋が
「だがこの話は、まだまだ長くなるから、今日のところは止めておこう」(362ページ)
なんて言います。いずれ、なにかの作品で披露されることになるのでしょうか?
七夕伝説と浦島太郎のつながり、というお話なんですが....

<蛇足5>
解説を西上心太が書いているのですが、
「QED 六歌仙の暗号」 (講談社文庫)が「六歌仙の暗合」になってしまっています。残念。
個人的に「QED 六歌仙の暗号」のことをミステリ的に見て大傑作だと思っているので一層残念です...



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