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読めない遺言書 [日本の作家 ま行]

読めない遺言書 (双葉文庫)

読めない遺言書 (双葉文庫)

  • 作者: 深山 亮
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2015/10/15
  • メディア: 文庫

<裏表紙側あらすじ>
中学校教師の竹原に、傷害事件を起こして以降、没交渉だった父親が孤独死したとの連絡が入る。父親は遺言書を残しており、そこには竹原の知らない人物に財産を贈ることが書かれていた。疑問に思いその人物を調べ始める竹原だが、やがてさまざまな事件に巻き込まれていく―。単行本刊行時に各紙誌で絶賛された長編ミステリーが遂に文庫化。第32回小説推理新人賞受賞作家のデビュー作。


「紙一重 陸の孤島の司法書士事件簿」 (双葉文庫)感想の際、
「同じ作者の「読めない遺言書」 (双葉文庫)が評判よさそうだったので読んでみようかな、と思ったら品切(絶版)。」
と書いたのですが、未だ本屋さんの店頭では手に入る、という情報を入手したので、知人に買ってきてもらいました!
失礼を顧みずいうと、これは拾い物。人手を煩わせて買ってきてもらってよかった、と思える佳品でした!

もっとも主人公・竹原俊和の小市民さ、というか、うじうじしたところを許容できるか、というのが一つのバー(ハードル)になるような気もします。
断絶していた父親が死に、遺言書が残されていて、遺産が渡る相手・小井戸広美のことを調べ始める。
なのに広美に恋愛感情を抱いてしまい、うじうじ。
女子生徒安田美宇花の態度や振る舞いにうじうじ。
不登校生・岡島大洋とその母親小枝子にうじうじ。
よくもまあ、これだけうじうじできるなぁ、というところですが、面白いのはそんな折にも、斜に構えたというか、皮肉に物事を捉えていて、なんか可笑しいですよね。
余裕がないくせに、余裕があるように思えるというか... 本人も認めている通り、一所懸命でないから、そう思えるのかもしれませんが。

そうして、それらすべてのうじうじエピソードが、相互の関連はない、あるいは非常に乏しいけれども、竹原のもとで意志決定につながっていく。
いいではないですか、こういうの。
そして背後に貫かれているのが、「ライオンズ大全」と、プロ野球史上最高のセカンドとうたわれている、往年の名選手辻発彦。
これもいいではないですか。

だいたいこういう設定の場合、一所懸命でない主人公が、さて、どんなきっかけで、どんなタイミングで一所懸命になり、やる気をだすのか、というのがポイントになるわけですが、辻発彦、やってくれますよ(笑)。
タイミング的には、あまりにもベタな状況での実力発揮(?) となるわけですが、そしてその際も単独自力で解決できはしないのですが、こういうストーリー展開にはそれでいいのです。
そして、それぞれのうじうじが、ちゃんと収まるところへ収まっていく。
この着地が見事なことが、この作品の長所ですね。

3冊目の著書のタイトルが「必殺の三文判」(双葉社)
どんな内容なのか、すごく気になります。
この作品が2016年に出た後、新刊は出ていないようです。
あまり作品数は多くないですが、今後も書き続けていってほしいですね。
また読んでみたいです。

タグ:深山亮
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