MEMORY [日本の作家 本多孝好]
<裏表紙あらすじ>
葬儀店のひとり娘に産まれた森野、そして文房具店の息子である神田。同じ商店街で幼馴染みとしてふたりは育った。中学三年のとき、森野が教師に怪我を負わせて学校に来なくなった。事件の真相はどうだったのか。ふたりと関わった人たちの眼差しを通じて、次第に明らかになる。ふたりの間に流れた時間、共有した想い出、すれ違った思い……。大切な記憶と素敵な未来を優しく包みこんだ珠玉の連作集。
このあらすじ、書きすぎだなぁ......
さておき、この本、出ていることを完全に見逃していて、今年に入って気づいて慌てて買ったものです。本多孝好の本なら、絶対、ですから。
とか言いながら、うかつなことに、
「MOMENT」 (集英社文庫)
「WILL」 (集英社文庫)
に続く連作短編集だということに、この感想を書く時点まで気づいていませんでした。
タイトルの付け方、というか、佇まいというかが、「MOMENT」 や「WILL」 に似てるなぁ、出版社もみんな集英社だしなぁ、と思っていながら......耄碌してきました。
シリーズ、というわけではありませんが、登場人物やエピソードが共通している部分があるそうです(もう前の2冊をすっかり忘れてしまっているし、現物も手元にはないので、確認できません...)。
だから、かもしれませんが、きわめて本多孝好らしい作品になっており、手触りというか雰囲気がなんだか懐かしかったですね。
いつもながら、うまいなぁ、と本多孝好には感心するのですが、この作品もそうです。
森野、神田というのが主役級の人物なのですが、この「MEMORY」 (集英社文庫)では脇役なんですよね。
いや、この説明は違いますね。
彼らは視点人物にはならないので、主役ではないように思えますが、脇から眺められるだけで、主役は森野と神田だと思いました。
もちろん、エピソード、エピソードには視点人物がいて、彼らが主役なわけですが、すべてのエピソードを通して、森野と神田の物語が伝わるようになっている。
折々、森野や神田のセリフで語られる部分はあるものの、視点人物にならないのに、この二人の姿が、思いが、どれほどしっかりと浮き上がってくることか。
小説推理新人賞でデビューしたのに、ミステリ味がごくごく薄味だなぁ、というところですが、本多孝好はこれでいいんですよね。
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