少年検閲官 [日本の作家 か行]
<カバー裏あらすじ>
旅を続ける英国人少年クリスは、小さな町で家々の扉や壁に赤い十字架のような印が残されている不可解な事件に遭遇する。奇怪な首なし屍体の目撃情報も飛び交う中、クリスはミステリを検閲するために育てられた少年エノに出会うが……。書物が駆逐される世界の中で繰り広げられる、少年たちの探偵物語。本格ミステリの未来を担う気鋭の著者の野心作、「少年検閲官」連作第一の事件。
書物が駆逐される世界、というと「華氏451度」(ブログの感想ページへのリンクはこちら)ですが、特にミステリがターゲットになっている、というのがおもしろい設定ですね。
かかるディストピアにおける小さな町が舞台になっています。
不思議な雰囲気をたたえていて、少年を主人公にしているので一層そう感じるのかもしれませんが、不思議な詩情が漂っています。
事件は、かなり陰惨なものなのですが。
解決は、この世界設定ならではのものになっていまして、よかったですね。
だから、手放しで称賛、と行きたいところですが、残念ながらそうはいきません。
こういう架空の世界のもとにミステリを構築するって、難しいですよね。
なかなかおもしろい着眼点から真相を作り出されているな、と思うものの、無理が多すぎますね、この作品の場合は。
でも、じゃあ、つまらなかったか、と言われると、強くNOです。
とてもおもしろかった。
無理が多いといった真相も、おそらくわざとなんじゃないかな、と。
そしてなにより、クリスとエノ、二人の交流が気になるのですね。
三部作となるシリーズらしいので、今後に注目ですが、第二作「オルゴーリェンヌ」 (ミステリ・フロンティア)が出た後、未だ第三作は出ていないようです。
<蛇足1>
「英国の銀行が発行しているキャッシュカードだ。そのまま通貨として利用することができる。」(56ページ)
キャッシュカードがそのまま通貨として使える......どうこうことなのか理解できませんでした。
キャッシュカードが、デビットカードとして使える、というのはわかりますが、そのまま通貨として???
<蛇足2>
「書物が残酷なことを教えたり、人を乱暴な性格に変えるなんて、きっと嘘だよ。」(123ページ)
「たり」の使い方が不正確ですね。129ページでは、「父親に怒られたり注意されたりした記憶がほとんどない」と正確に使われているのですが。
一生懸命という表記も43ページにあります。
タグ:北山猛邦
コメント 0